経営・戦略

2025.12.12 13:30

コマツ今吉CEOが語る「信頼の総和」、不確実な時代を勝ち抜く哲学

今吉琢也|小松製作所 代表取締役社長 兼 CEO

今吉琢也|小松製作所 代表取締役社長 兼 CEO

2025年10月24日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。

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建設・鉱山機械に強みをもち、海外売上高比率が9割を超えるグローバル企業、小松製作所。米トランプ政権の政策に揺れる世界で、冷静沈着に勝ち続けるための秘策とは。


撮影中も取材の席でも、今吉琢也との会話は常に単刀直入だった。経営戦略からトランプ関税の影響まで、発する言葉に迷いやためらいは見られない。

世界がトランプ政策に揺れる2025年4月に社長兼CEOに就任した。直後に発表した新中期経営計画(25~27年度)では、「社員」「人権」「顧客」「倫理・統治」「地域社会」「環境」の6つの分野のマテリアリティを特定。それらを同社のサステナビリティ基本方針と結び付け、社会課題の解決と収益向上の好循環による持続的な成長を目標に掲げた。

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「コマツでは、企業の価値とは株式価値だけで測れるものではなく、コマツを取り巻く社会とすべてのステークホルダーからの信頼の総和であると定義しています。信頼とは、ステークホルダーとの対話を重ね、相手が何を求めているのかを深く理解し、その期待に応え続けることで初めて築かれるもの。私自身、100パーセントこの考え方を信じています」

コマツグループの事業は建設・鉱山機械が中心だ。顧客には、インフラ工事や資源採掘を手がける企業などが名を連ねる。今より燃費効率がよく、生産性と安全性が高い製品を提供できれば、顧客のCO2排出量とコストを同時に減らすことができる。目指すのは、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」だ。

カーボンニュートラルに向けた取り組みでは、技術革新を通じて燃費効率の高い機械の開発や電動化、代替燃料の活用、水素技術の研究などを推進している。外部からの評価は高く、環境情報開示システムを運営するNGO・CDPの気候変動部門と水セキュリティ部門では22年から24年までAリストに選定された。

ICTソリューションを活用した「スマートコンストラクション®」にも力を入れる。実は、業界でいち早く建設機械にGPS機能を搭載したのはコマツだ。「Komtrax」(コムトラックス)という、リモートで機械の状態を把握できる仕組みを01年から標準装備している。08年には世界で初めて、鉱山向けの無人ダンプトラック運行システムを商用化した。

近年は、森林の再生をサポートする林業機械事業を第三の柱と位置づけ強化している。ICTを活用して伐採から造材、搬出、植林までの一連の流れを機械化し、自然環境を保全しながら安全性と生産性の向上を目指す。

「対話を重ね、現場を知れば知るほど、機械の販売やメンテナンスだけではお客様の課題解決にならないと気づきました。技術は刻一刻と変わります。もっと研究して(取り組みや事業の)幅を広げないといけないと思っています」

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文=瀬戸久美子 写真=平岩 享

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