AI

2025.12.12 11:00

AIが企業らしさをまとう未来──「生活者インターフェース市場フォーラム2025」が描く価値創造の新基準

2025年で6年目を迎えた博報堂主催「生活者インターフェース市場フォーラム2025」。11月18日に開催されたフォーラムのテーマは、「いっしょに話そう。世界が変わるから。- AIエージェント時代の生活者価値デザイン -」だ。

生成AIとの対話が生活者の行動や選択に影響を与えるようになった今、企業と生活者の関係も新たなステージを迎えている。基調講演に登壇した博報堂 代表取締役社長 名倉健司(以下、名倉)は、AIエージェントとの対話を通じて生活者の潜在的な欲求が引き出され、そこから新たな価値やビジネスチャンスが生まれていくという未来像を示した。そしてその価値創造を企業とともに形にしていくことが、博報堂の目指す「生活者価値デザイン」だと語った。


25年11月18日に開催されたフォーラムで、名倉はまず、同社が定義する「生活者インターフェース市場」について解説した。デジタル化によって生活のさまざまな場が企業と生活者をつなぐ新しい接点となり、そこから新しいサービスや価値が生まれる構造であることを説明。そのうえで、「AIエージェントこそが、この市場を飛躍的に進化させる次なる波である」と位置付けた。

博報堂DYホールディングスが同年10月に実施した調査では、AIを積極的に使う人ほど「気づき」や「発想の広がり」を得ている傾向が明らかになった。名倉は、「この創造的な対話がAIエージェントの価値であり、生活者の潜在ニーズをつかむ新たな手がかりになる」と語った。

「例えば、アパレル企業のAIエージェントに週末の過ごし方を相談すれば、デートプランとともにファッションを提案してくれる。金融AIエージェントに将来の不安を話せば、最適な投資プランを返してくれる。生活者がAIエージェントと対話するということは、生活者が企業と対話するということです。

さらに生活者自身も自分の代理となるAIエージェントをもつようになり、趣味嗜好や価値観、不安や期待といった内面の情報を蓄積しながら、自律的に情報収集・比較・交渉・購入まで行うようになるでしょう。こうした生活者側のエージェントが生む膨大な生活文脈と、企業側のエージェントが交わす対話が重なり合うことで、1万人の生活者の1万種類の欲求に、1万通りの対話で応える世界が訪れます」(名倉)

博報堂DYグループでは、人間中心のAI研究機構「Human-Centered AI Institute」を設立し、広告・マーケティングの核となるコンセプトを、AIとの対話を通じて導く社内実践を進めている。名倉は、同社が長年培ってきた「生活者発想」とAIを掛け合わせることで、従来の延長にはない「別解」を生み出せると強調。

「生活者自身が気づいていなかった欲求が解き放たれ、胸をときめかせる未来をつくることこそが、私たちが目指す『生活者価値デザイン』である」と述べ、未来への決意を示した。

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text by Aya Ohtou(CRAING)

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