AIは「寄り添う存在」になれるか──創造性と関係性から読み解く未来
名倉が提唱した「生活者価値デザイン」というビジョンを受け、続くSESSION 2とSESSION 3では、AIエージェント時代における「創造性」と「関係性」を、人とAIの関わりの観点から掘り下げていくトークセッションが行われた。
SESSION 2では、お笑い芸人であり作家の又吉直樹、ファッション業界でAI活用を実践してきた上條千恵、企業のAI変革を先導する野口竜司と、ファシリテーターとして博報堂 PROJECT_Vega エグゼクティブクリエイティブディレクターの近山知史が登壇。
AIを自身の思考の外へ導く存在としてとらえ、創造性を拡張するための実践的なアプローチを語った。セッションが進むにつれ、人間にしかもち得ない価値は、「ストーリー性」「哲学」「こだわり」といった主観的なプロセスや意志にこそある、という考えが共有された。
SESSION 3には、AI・ロボット・人と機械のインタラクションを研究する大澤正彦、移動や対話に制約をもつ人々の“もうひとつの身体”をつくるロボット開発者の吉藤オリィ、顧客体験(CX)と体験価値デザインを牽引する博報堂 CXクリエイティブ局長の入江謙太、そしてファシリテーターとして博報堂メディア環境研究所 上席研究員の野田絵美が登壇した。
本セッションは、SESSION 2で議論が交わされた創造性を「社会のなかでどう機能させるか」という、実践的な「関係性のデザイン」をテーマに、AI・ロボットがドラえもんのように人々から「寄り添われる存在」になると生活者はどう変わっていくかについて探った。
AI研究者の大澤は、人がAIに“心”を感じるためには、完全に予測可能な存在ではなく、「適切な予想外」や「人間味」といった不完全性が不可欠だと指摘。吉藤は、分身ロボットの取り組みを通じて、人同士の繋がり(関係性)を生み出すことこそが人間が担うべき「関係性労働」であり、こうしたテクノロジーによる関係性の仲介・増幅を「リレーションテック」として提唱した。
完璧なAIではなく、適切な予想外をもつAIだからこそ、人間は意図を感じ、絆を築くことができる。この2つのセッションは、AIと人が共存する未来において、人間固有の価値をどう生かすべきかという問いに対し、今後の具体的な行動へと繋がる確かなヒントを提示した。


