暗号資産

2025.12.05 15:00

トランプと暗号資産業界の「露骨な癒着」を示す人脈、米民主党が追及開始

Shutterstock.com

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米下院司法委員会の民主党スタッフは11月下旬、トランプの暗号資産人脈に関する報告書公表した。報告書は、トランプとその家族が暗号資産業界から多額の献金や出資を受ける一方で、政権が恩赦や規制当局の判断を通じて業界に便宜を図ってきたと指摘している。

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本稿では、同報告書とSEC・司法省などの公表資料、フォーブスによる資産価値の試算を基に、捜査や訴追の対象となった企業や投資家が、献金やビジネス提携を通じてホワイトハウスとの関係を築いてきた経緯を整理する。また、そうした関係がトランプ家の暗号資産ビジネス拡大とどのように結び付いているのかを、具体的な事例の連鎖として追う。

「トランプは、金で買える“恩赦システム”を作り上げた」

トランプ大統領と息子たちは、その知名度だけでなく業界インサイダーの力を借りて暗号資産のビジネス帝国を築き上げた。暗号資産関係者の多くは、大統領の助けを必要としていた。

トランプは2025年10月、暗号資産取引所バイナンスの創業者チャンポン・ジャオ(趙長鵬)に恩赦を与えた直後、その判断に個人的利益が絡んでいたのではないかという疑念に直面した。彼の純資産は、5月にジャオの企業が関与した取引によって、数億ドル(数百億円)規模で膨らんでいたためだ。

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「彼のことは知らない。会った記憶もない」とトランプは語った上で「彼は多くの支持を集めているし、そもそも彼のやったことは“犯罪ですらない”と言われている」と続けた。ジャオ本人がマネーロンダリング対策を怠った罪を認めたことを意に介していない様子だった。

司法省で2025年3月まで恩赦手続きを統括していたリズ・オイヤーは、「トランプは、金で買える“恩赦システム”を作り上げた」と語る。一方、さまざまな法的リスクを抱える暗号資産の投資家や企業は、これを好機と捉えたようだ。トランプ政権が彼らのビジネスに影響を与える法的判断を下していた時期に、10社前後がトランプの政治団体に寄付し、トランプの暗号資産事業と提携し、トランプの企業に出資した。

記者向けに定型の回答文

こうしてトランプは、家族の暗号資産ビジネスを支えたい業界関係者が自然と集まる、都合のいい立場に身を置くことになった。ホワイトハウスには、暗号資産を巡る利益相反についての質問が殺到している。その結果、今では記者向けに定型の回答文が用意されているほどだ。11月24日には、その1つが報道陣に送られた。

「大統領とその家族は、これまで利益相反に関与しておらず、今後も関与しない」と報道官のキャロライン・レヴィットはその文中に記した。「トランプ政権は、行政措置やGENIUS法案の推進、常識的な政策によって、米国を“世界の暗号資産の中心地”にするという大統領の約束を果たしつつある。イノベーションを加速し、すべての米国人に新たな経済機会を生み出すためだ」と彼女は続けた。

米民主党「政府の説明責任と誠実さを取り戻すため、あらゆる手段を使う」

共和党が議会を掌握している現状では、トランプ陣営にとって倫理面の批判は簡単に受け流せる。しかし、もし中間選挙で下院の主導権が入れ替われば状況は変わる。野党側はすでに、大統領の金の流れを精査する準備を整えている。下院司法委員会の民主党側の報道担当者は、「政府の説明責任と誠実さを取り戻すため、利用可能なあらゆる調査手段と立法手段を使う」と述べている。民主党は、11月25日に発表したトランプの暗号資産人脈に関する報告書でこう述べた。「この腐敗に関与した者や加担した者たちを委員会に出席させ、質問に答えさせ、文書を提出させるつもりだ」。

こうした警告は、暗号資産企業を困難な立場に追い込むことになる。トランプに資金を投じれば、当面は状況が良くなるかもしれない。だがその行為が、後になって厳しい追及を招く可能性もある。

以下に、すでに議会の関心を集め始めているトランプと関わりのある人物や企業を紹介する。

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翻訳=上田裕資

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