仏高級ブランド、エルメスの創業者一族で相続人のひとりであるニコラ・ピュエシュ(82)が、高級ブランド世界最大手のLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンと、その会長で最高経営責任者(CEO)のベルナール・アルノーを提訴したと、複数のメディアが報じた。ピュエシュは保有していたエルメス・インターナショナルの株式約600万株、時価160億ドル(約2.5兆円)超相当を元資産管理人に勝手に売却されたと主張しており、これに絡んだ訴訟だという。
ロイターによると、ピュエシュが提訴したのは元資産管理人のエリック・フレモン、アルノー、LVMH、2人に関連する持株会社。LVMHが10年以上前にエルメスの株式を買い進めていた際、ピュエシュの保有する株式をフレモンが無断で処分したと訴えている。
ロイターとブルームバーグが引用した未公開の訴状は、ピュエシュが失ったエルメス株の価値を140億ユーロ(約2兆5400億円)と評価している。
しかし、フレモンは今年7月、スイスで列車にはねられて死亡した。ロイターはパリ検察当局の情報として、ピュエシュの主張に関する刑事捜査はフランスで継続中だが、捜査対象はフレモンのみだと伝えている。
LVMHはフォーブスの取材に応じなかったが、その後ロイターに対し「エルメス・インターナショナルの株式を不正に取得したことは、いかなる時点においても一切ない」「ニコラ・ピュエシュ氏が示唆する『隠し株』も一切保有していない」と訴えを否認した。
アルノーはこの数十年間にさまざまなブランドの買収を進め、LVMHを高級ブランド帝国へと育て上げた。1997年には化粧品小売店のセフォラを、2021年には老舗宝飾店ティファニーを158億ドル(当時のレートで約1兆6000億円)で買収している。
2010年には、LVMHの最大の競合相手であるエルメスの株式23%を密かに取得していたことを明らかにした。LVMHとエルメスは2014年、アルノーがLVMHの保有するエルメス株を自社株主へ割り当てることで和解したが、アルノーの持株会社はその後も8.5%のエルメス株を保有し続けている。
フォーブスの推計によると、アルノーの純資産は米東部時間12月3日時点で1886億ドル(約29兆2600億円)で、世界第7位の富豪である。一方、フレモンと係争中だったピュエシュは今年、フォーブスの長者番付から陥落した。ピュエシュは2023年にも、雇用していた当時51歳の庭師の男性を養子に迎え、資産の一部を相続させる計画を公表して話題を集めた。
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