「量だけアピール」は批判を招く
25年版の目玉のひとつが「ESGフィット度ランキング」だ。大企業のESG関連の情報の発信量は加速度的に増えている。統合報告書のページ数は膨大になり、SNSなどの発信ツールを通じた情報提供も頻繁に行われている。
情報開示が進んだ今、問われるのは質の部分だ。企業のESGの取り組みが、その企業の事業や価値創造とリンクしているかどうかを定量化する必要がある。表層的なパフォーマンスやアピールは批判を招きかねない。ESGフィット度を定量化・可視化することは、企業が進んでいる、あるいは進もうとしている方向が正しいかどうかを見るうえで意義がある。
トランプ政権の反ESGの姿勢やエネルギー問題など、規制環境や市場環境の不透明性は増す一方だ。変化に迅速かつ適切に対応するためには、社内外のステークホルダーが置かれている状況を理解し、どうすれば社会価値と事業価値を両立できるかを構造化してとらえることが求められる。そのうえで、圧倒的な解像度の高さと迫力、ロマンをもってステークホルダーを巻き込み、新たな価値創造を訴求する。これこそが、今のリーダーに必要な役割だ。
加えて意識したいのが、サステナビリティ経営におけるAI(人工知能)との付き合い方だ。企業の非財務情報の開示が量・質ともに多様化した結果、AIで統合報告書を要約したものを読む投資家が増えている。このような傾向を踏まえ、企業は「AIフレンドリー」な報告書を設計する必要がある。
メッセージは明快か。テキストデータや数値データは機械で抽出できる形式になっているか。AIの可読性を意識しながら情報発信のあり方を転換することが、投資対象として選ばれる確率を高め、PBRや企業価値の向上につながる。企業にとって、AIも重要なステークホルダーなのだ。
2025年版ランキングの特徴
形式主義から本質主義へ
▶︎社会性と事業性をリンクできている企業が上位にランクイン「人的資本」の重要性
▶︎「従業員」の項目の得点がほかのカテゴリーに影響をもたらしているステークホルダーとしてのAI
▶︎AIにもフレンドリーな報告書を設計する必要性が拡大
平瀬錬司◎国内最大級のESGデータ分析プラットフォーム「TERRAST」、ESGデータの開示・分析支援ソリューション「TERRAST powered by uniqus」を提供するサステナブル・ラボのCEO。


