「海賊版に対しては、我々が真っ向から対決する以前に、まだやるべきことがたくさんあります。まず、日本以外の場所に住む読者の需要に応えられる形で、合法的に提供できる作品を増やす必要があります」とルーは語る。「そうなるために注力すべきは、正規コンテンツを人々が容易に入手できるような方法で提供することです。それが実現すれば、問題は自然と解決に向かうでしょう」
デジタル配信はこのような懸念をいくらか緩和するために役立っているが、しかし、デジタルコンテンツの普及に関して、米国は日本に大きく遅れを取っているのが実情だ。日本では電子版コミックがマンガ市場規模の約73%を占める(出版利益においては90%近くを占める)のに対し、米国の市場でデジタル版の売上は概算で20%以下に留まる。これらの数字の差と、米国がその差を縮める可能性が、最近の米国におけるデジタル版コミック産業で目立っている新しい活発な動きの多くを、おそらく牽引しているのだろう。
いくつかの出版社はローカライゼーションを解決する手段になり得るとしてAI(人工知能)に注目しているが、これはファンやクリエーター、翻訳者たちの間で物議を醸している。ルーによれば、Kodanshaは「当社の求める正確性と品質を維持するために、現時点では人間の翻訳者にこだわり続ける」方針であり、AIは同社の膨大な出版物の中から読者が新たな作品を発見することを支援するツールとして検討するに留まっているという。
このようにあらゆる面において、Kodanshaは、他のマンガ出版企業と同じく、米国市場において利益を維持するだけでなく、新たなプラットフォームや新たな読者層への拡大を目指している。これはマンガファンや読者にとって、大変良いニュースだ。


