経営・戦略

2025.12.06 08:00

世界で拡大を続ける「日本のマンガ」、講談社が語る次なる米国市場での戦略

米国の書店に並ぶ『進撃の巨人』の英語版(Shutterstock.com)https://www.shutterstock.com/image-photo/bellevue-wa-usa-circa-july-2022-2182551647

「米国産コミック(読者層が年配・男性に偏っている)業界とは逆のことに私たちは挑戦しています」と、ルーは話す。「米国産コミック業界は若い読者層を見つけようとしていますが、私たちはそのような読者層をすでに得ています。90年代の名作マンガが、新装版の刊行によって再び活性化することを、私たちは認識しています。それは今、本物のノスタルジーを感じさせる要素が市場で価値を持ち、それが訴求できる米国人の読者が存在するからです。同時に、それらの作品は、かつて読者だった人々によって語り継がれてきたことで、より若い読者も同じように興味を持っているのだと私は思います。そのように、名作マンガの新装版は、私たちに参入する新たな領域を開きました」

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技術的動向と課題

作品ラインアップの拡充に関しては、マンガ業界には翻訳とローカライゼーション(現地対応)というハードルや、海外市場における印刷・流通業務の経済面という問題が常にあった。英語圏市場は成長しているものの、その規模は日本における年間販売額の7043億円(2024年の推定額)、国民一人当たり約5500円という数字に比べれば、依然としてほんのわずかに過ぎない。

対する2024年の米国全体におけるコミックおよびグラフィックノベル(マンガと西洋式コミック)の市場規模は、業界専門サイトのICV2の推計によると、約19億ドル(約3000億円)、国民一人当たり5.88ドル(約920円)だった。ゆえに多くの日本の出版社はこれまで、英語版を出版することに、潜在的需要があるにもかかわらず、ほとんど価値を見出してこなかったのだ。

これが数十年にわたり業界を悩ませている1つの問題を引き起こしてきた。原本をスキャンして作られた海賊版の蔓延だ。インターネット上で無料または低価格で入手できるこのような海賊版データは、出版社や作者から収益を奪い取るだけでなく、消費者をコンテンツが無料または低価格で入手できるものだと思うことに慣れさせてしまうのだ。

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翻訳=日下部博一

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