「散文学の小説は、親会社である講談社のDNAにおいて大きな割合を常に占めてきました」と、Kodansha USAアルヴィン・ルー社長兼CEOは語る。「この数十年間、当社(Kodansha USA)はマンガに集中してきましたが、私たちには膨大な既刊書リストがあり、日本語書籍の翻訳版専門出版社として設立されたVertical(ヴァーティカル)を買収したことで、それがさらに充実しました」
アニメからK-POP、そして米国で製作された日本を舞台とする歴史ドラマ『SHOGUN 将軍』など、アジアのポップカルチャーに対する(米国民の)関心の高まりが、新たなコンテンツを求める顧客の需要を活性化させている一方で、ストリーミングサービスやデジタルプラットフォームの拡大によってファンへの直接配信が容易になった。このような相乗効果は、マンガ初心者から長年のマニアまで、様々な段階にいる読者にそれぞれ合わせて、複数のエントリーポイント(最初の接点)やプラットフォームを提供できるKodansha USAのような企業に利益をもたらすと、ルーは語った。
例えば、Kodansha USAは最近、吉川英治の古典的剣豪小説『宮本武蔵』(実在した有名な剣豪をモデルにした作品で、過去に映画化もされている)の翻訳版である『Musashi』の新装版を刊行したが、その新しい表紙のイラストは、『スラムダンク』『バガボンド』の作者である漫画家・井上雄彦に依頼した。現代のマンガやアニメのファンが時代小説に惹き寄せられるきっかけとなることを期待したためだ。
読者層の拡大
Kodansha USAはまた、読者層の成熟にも好機を見出している。米国市場においてマンガは、まず『ドラゴンボール』『セーラームーン』『ワンピース』『僕のヒーローアカデミア』など、子供向けのシリーズがアニメ化されて人気を博したことで大きな支持を得るようになった。現在、そのような1990年代から2000年代にマンガを読み始めた最初の世代が30代から40代となり、この数十年の間に幅広い作品、ジャンル、スタイルの探求を経験してきた。そうした長年のマンガ読者たちは、成熟した自らの嗜好に合う新たな作品だけでなく、懐かしさを呼び覚ます過去の作品の復刻版もまた強く求めている。


