欧州

2025.12.04 09:00

戦時下のウクライナの教育環境 ゼレンスキー大統領夫人が語る

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(左)とオレナ・ゼレンシカ夫人。2025年12月1日撮影(Ibrahim Ezzat/NurPhoto via Getty Images)

ロシアの侵攻は、特に高校3年生に深刻な影響を及ぼしている。侵攻開始当初、大学に出願する高校生は減少した。英科学誌ネイチャーが6月に掲載した論文によると、ロシアの侵攻でウクライナの高校3年生の16%が避難民となった。2022年には高校3年生の34%が、大学への出願に必要な全国統一高等教育入学試験を受験しなかった。現在は、生徒が学習を継続できるよう支援する多くの取り組みが実施されている。

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ウクライナでは、戦争による人口動態の変化も教育に影響を与えている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の推計によると、ロシアの侵攻により、ウクライナでは人口の4分の1に相当する1060万人が避難生活を送っている。避難民の約3分の1は子どもで、約2万人のウクライナ人児童がロシア軍に連れ去られた。こうした要因がウクライナの教育制度に負担をかけている。

パンデミックの教訓を生かしたデジタル環境

ウクライナ全土の教育機関が授業への取り組み方を変えようとする中、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)から得られた教訓が役立っている。同ウイルスが猛威を振るった2019~21年にかけて、ウクライナの教育機関は教師がオンラインで授業を放送する遠隔学習に重点が置かれた。政府は生徒が技術的な技能を習得できるよう、認定プログラムを備えた情報技術への取り組みを開始した。パンデミック終息後もこうしたデジタル基盤が維持されたことで、2022年にロシアが侵攻を開始すると、ウクライナの教育機関は迅速に適応することができた。経済協力開発機構(OECD)は7月、国際学力調査(PISA)参加国中、教育におけるデジタル技術の利用率で、ウクライナを世界1位に位置付けた。

オレナ夫人は「2020年にパンデミック対策として創設された『ウクライナ全国オンラインスクール』などのデジタル施策は、国内にとどまらず、一時的にロシアに占領された地域や国外にいる生徒たちが空襲警報や避難生活の中でも学習を継続する助けとなっている」と強調し、政府が支援する教育プラットフォームの登録者数が100万人に達したと述べた。国内の子どもたちへの教育が主な焦点ではあるものの、国外で暮らしているウクライナの子どもたち向けの授業も提供されている。

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オンライン学習の選択肢に加え、教育科学省やオスビトリヤなどのNGOが全国の学校と連携し、安全な対面授業も行われている。ウクライナ政府によると、2022年以降、約200の地下学校が建設され、いずれも通常の学校と同様に机や椅子、教科書、学用品が完備されている。

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翻訳・編集=安藤清香

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