――4日間で4つのパートを撮った、と。撮り直しはしましたか?
ブラッドリー:撮り直しはありませんでした。最初から最後までパフォーマンスをやりきりました。最初の夜、ステージに出る前の場所で私が「ロッカールーム」と呼んでいるところに座っていたのを覚えています。まるで(NBAの現役時代のように)“試合”に出るのを待つような感覚でした。自分を奮い立たせ、準備を整え、その気持ちで臨んだのです。
――当初は観客の前でのライブを全米各地で行いたかった、と。
ブラッドリー:パンデミックが起きるまでは、ニューヨークでのように、15〜20の都市を回り、それぞれの都市で4夜ずつショーをするというアイデアでした。プロバスケットボール選手や政治家としてツアーに出るのによく似ていて、私には馴染み深いものです。それがコロナ禍では不可能でした。そこで、映像に残すことにしました。YouTubeでは1500万人以上再生されています(編集部註:2025年11月現在)。スペイン語版と中国語版も公開される予定です。私はいつだって前に進み続けたいと思っています。
――コロナ禍で中止になったツアーに向けて再挑戦する考えはありますか?
ブラッドリー:いやいや、もし今、“ショー”での台詞を暗唱するように言われてもできませんね。一部ならできますが、さすがに全部はムリです。もう4年もやっていませんから。でも幸い映像に収められ、当時の私のやっていたこと、そして私がどんな人間であるかを捉えています。それで満足です。どうせなら、次は歌いますよ。ヴァン・モリソンやボブ・ディランとか、レナード・コーエンの曲を歌うのを聞いてもらいたいですね(笑)。
――あなたの自伝的ドキュメンタリー、そして語りを読者の皆さんに紹介したいと思った理由の一つは、議員のキャリアそのものが非常にユニークだからです。NBAのスター選手から米大統領候補、ビジネスパーソンとして成功した人はほかに類を見ません。それに、作品のタイトル『Rolling Along(とうとうと流れつづける)』のように、今も進化し続けていますね。
ブラッドリー:『Rolling Along』は、『Ol' Man River(オールマン・リバー)』という歌の歌詞から取っています(編集部註:ジェローム・カーン作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞で、ミシシッピ川をテーマに黒人差別を描いたミュージカル『Show Boat<ショウボート>』の有名曲)。父の好きなミュージカルは『ショウボート』で、好きな歌は『オールマン・リバー』でした。この歌が生まれた場所です。ミシシッピ川はアメリカの中心部を流れており、私はそのすぐそばで育ちました。ミシシッピ川沿いに農場を所有していたこともあります。この歌は私の人生の比喩なのです。何十年もの間、アメリカという国に魅了されてきました。


