サイエンス

2025.12.04 18:00

古代から現代まで、人類の歴史に名を残す「猛毒植物」3選

ソクラテスの死(Shutterstock.com)

3. トウゴマ:現代のテロに使われる猛毒

トウゴマの花と果実 (Shutterstock.com)
トウゴマの花と果実 (Shutterstock.com)

ドクニンジンやベラドンナと違って、トウゴマから抽出されるリシン(Ricin:必須アミノ酸のリシンlysineとは別物)には、典型的な現代の猛毒という印象がある。これはリシンが、現代のスパイ活動やバイオテロ、政治的暗殺の企てに利用されてきたためだ。しかし、リシンもまた、れっきとした自然界の毒物だ。

advertisement

リシンは、キントラノオ目トウダイグサ科のトウゴマ(別名ヒマ、学名:Ricinus communis)の抽出物であり、これまで科学的に分析された中で、最も毒性の強い物質の1つだ。その威力は、わずか1mgで成人を死に至らしめるほど強い。

2019年に学術誌『Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology』に掲載された論文で解説されている通り、リシンは、体内のタンパク質合成を停止させる作用を持つ。細胞内に侵入したリシンは、タンパク質合成を司る細胞小器官であるリボソームの機能を阻害する。これにより、実質的にすべての生命維持機能がストップする。細胞は死に、臓器は機能を停止し、生物個体そのものも数日のうちに死を迎える。

自然界でトウゴマは、種子食動物に対する防御の最終手段としてリシンを利用している。多くの動物にとって、トウゴマのつややかな種子は強く食欲をそそるが、その結末は例外なく中毒死だ。

advertisement

ところが皮肉なことに、ヒトは数千年にわたりトウゴマを栽培し、ひまし油を採取してきた。ひまし油はごくありふれた日用品でありながら、リシンとまったく同じ種子を原料としている。また、トウゴマは観葉植物としても栽培される。

毒抜きされたひまし油は、何の問題もなく食用や美容製品として利用できる。しかし、種子の搾りかすは安全とはいえない。リシンは非常に強力な毒物と認識されており、化学兵器禁止条約および生物兵器禁止条約で規制物質に指定されているほどだ。しかし進化的観点からは、植物が化学物質を巧みに利用して生き抜いている証拠の1つといえる。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事