収益化までの期間を民間資本が埋め、新たな投資家が防衛分野へ参入
だが、防衛系スタートアップは、収益化までの時間が長いという課題を抱えている。技術開発に巨額の資金が必要で、政府契約に依存するビジネスモデルであるためだ。「そのギャップを埋めるのが民間資本だ」と語るのは、2025年ユニコーン入りしたForterra(フォルテラ)とTekeverに出資した投資会社Crescent Coveの創業者のジュン・ホン・ヘンだ。
新たに防衛領域に参入する投資家も増えている。2025年は大手ヘッジファンド、ポイント72がこの分野に特化したファンドを設立し、Yコンビネーターも防衛関連のアイデアを持つ創業者に応募を呼びかけるようになった。シリコンバレー有数のアクセラレーターである同社は、2024年8月にAres Industries(アレス・インダストリーズ)へ投資した。同社が防衛関連企業に出資するのはこれが初めてだった。
起業家の意識も変化、シリコンバレーで防衛産業に挑む動きが広がる
政府と民間投資家の関心の高まりは、スタートアップの姿勢にも影響を及ぼしている。8年前に防衛系ベンチャーキャピタルHarpoon VCを創設したラーセン・ジェンセンは、ここ数年で起業家の間に「軌道修正」が起きていると語る。かつては人気のソフトウェア領域に向かっていた創業者が、防衛分野に積極的に挑むようになったという。
こうした変化は、新たな創業者コミュニティの誕生にもつながっている。カリフォルニア州エルセグンドに集まる起業家は、自らを「Gundo bros(グンド・ブラザーズ)」と名乗り、シリコンバレーの中でも愛国的で保守的な価値観を掲げている。「ウクライナ戦争以降、防衛企業であることを公言することはもはやタブーではなくなった。政府向けに技術を提供し、米国を守ると堂々と言える空気になった」と調査会社PitchBookのアナリスト、アリ・ジャヴァヘリは語る。
過熱する市場から本物の勝者が現れ、防衛産業の風景を変えるとの予測
投資家は、今後1年半ほどの間に、こうした企業の一部が大型の政府契約を獲得し始めると見ている。ライトスピード・ベンチャー・パートナーズのコナー・ラブはこう話す。「バブルだと言うこともできる。資金が誤った方向に流れたり、過大評価された企業が生まれることは避けられないだろう。それでも、最終的には防衛産業の構造そのものを変える、5〜6社の『本物』が現れると確信している」。
以下に、2025年ユニコーン入りした防衛関連のスタートアップ10社を評価額順に紹介する。


