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2025.12.08 13:00

2025年に誕生した「防衛ユニコーン」10社——軍事×宇宙×AIの新勢力の詳細

Shutterstock.com

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2025年も防衛テクノロジーへの投資熱が高まり、過去最多のユニコーン企業が誕生した。一部では「軍事バブル」と呼ぶ声もあるほどだ。評価額が10億ドル(約1550億円。1ドル=155円換算)を上回る防衛ユニコーンの数は2025年、過去最多を記録している。

2025年の防衛分野に総額約7.4兆円の資金が流入し、ユニコーン企業の数が急増

防衛テクノロジー分野のスタートアップに2025年投じられた資金の総額は、480億ドル(約7.4兆円)を超え、新たに10社がユニコーン入りした。PitchBookのデータでは、2025年の新顔のみで活動中の防衛ユニコーン全体の3分の1超を占める。また、活動中の防衛ユニコーン全体の評価額は4950億ドル(約76.7兆円)に達している。

これは、低金利を追い風に530億ドル(約8.2兆円)が流入した2021年と比べると、活動中の防衛ユニコーンの数が約2倍になったことを意味する。投資総額は2021年よりわずかに少ないものの、1回あたりの調達額はほぼ倍増しており、案件数が減る一方で1件ごとの投資規模は拡大した。

防衛ユニコーンの数は、現在500社に上るAIユニコーンとは大きな開きがある。それでも、数年前と比べると急速に増えている。2020年以前、この分野にはアンドゥリル、パランティア、スペースXなど、ごく少数の企業しか存在しなかった。

「2025年の巨額投資の主役は、間違いなくAIと防衛分野だった」と語るのは、パランティアやアンドゥリルの初期投資家でもあるXYZベンチャーキャピタルのマネージングパートナー、ロス・フビニだ。

ロシアによるウクライナ侵攻や中国との緊張によって、世界の防衛支出は過去最高を記録

2021年以降、この分野の投資額は累計2040億ドル(約31.6兆円)に達した。引き金となったのは、ロシアによるウクライナ侵攻と、中国との緊張の高まりだ。これを機に、新しい兵器や軍事技術への需要が世界規模で膨らんでいる。ストックホルム国際平和研究所の推計では、世界の防衛支出は10年連続で増加し、2024年は2兆7000億ドル(約418.5兆円)と過去最高を記録。前年比9.4%の伸びとなった。

地域別では、欧州が全体の26%、最大の支出国である米国が世界全体の支出額の37%を占めた。米国政府は2026年度の防衛予算を、2021年から3割増、前年から13%増の1兆ドル(約155兆円)に設定した。この予算には、1月にトランプ大統領が発表したミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」向けの250億ドル(約3.9兆円)、宇宙関連費の340億ドル(約5.3兆円)が含まれる。

既存の軍需大手が市場の速度に遅れ、スタートアップに参入の余地

しかし、これだけの需要がありながら、ロッキード・マーティンやレイセオンといった既存の軍需大手は、市場のスピードについていけていない。その結果、1兆ドル(約155兆円)規模に膨らむ予算の一部を、スタートアップが獲得できる余地が生まれている。

ウクライナでドローンが活躍、製造を行う企業への投資が集中

その象徴が、ウクライナの戦場での安価なドローンの活躍だ。「スパイダーウェブ」と呼ばれた極秘作戦では、117機のドローンがロシア側の軍事施設を攻撃し、推定70億ドル(約1.1兆円)の損害を与えたと報じられた。これを受け、投資家の視線は一気にドローン関連のスタートアップへと向かった。

2025年ユニコーン入りした防衛企業のうちの3社が、ドローンの製造元だ。Quantum-Systems(クアンタム・システム)、Destinus(デスティヌス)、Tekever(テックエバー)の3社は、2025年に合計約11億ドル(約1705億円)を調達した。

次ページ > 収益化までの期間を民間資本が埋め、新たな投資家が防衛分野へ参入

翻訳=上田裕資

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