ウクライナの無人水上艇(水上ドローン)「シーベビー」が11月28日、トルコ沖の黒海の国際水域を航行していたロシアの石油タンカー2隻を攻撃した。ロシアの石油収入を狙ったウクライナの無人艇による作戦が大幅に拡大した形だ。
攻撃を受けたのは「カイロス」と「ビラト」で、いずれもガンビア船籍だが、西側当局はロシアが国際制裁逃れに用いている「影の船団」に属する船と断定している。ウクライナ保安庁(SBU)は地元メディアのキーウ・インディペンデントに対し、およそ7000万ドル(約110億円)相当の石油を輸送可能な2隻を無力化したとしている。
Ukrainian forces released videos of the operation against the two oilers Kairo and Virat in the Black Sea which tried to reach the Russian coast.
— (((Tendar))) (@Tendar) November 29, 2025
The message is clear:
If you are a shipowner trying to get Russian oil, expect that you will lose your whole ship. pic.twitter.com/Zg91DqbKmZ
カイロスとビラトがウクライナの国産無人艇による攻撃を受けたのは、トルコ北西部コジャエリ県の沖合約28〜35カイリ(約52〜65km)の水域だった。ウクライナはこれまで主に黒海北部で無人艇作戦を展開しており、今回の攻撃場所は従来の作戦範囲を大きく超えている。カイロスはシーベビーによる攻撃を受けて火災を起こし、トルコの沿岸警備隊が乗組員25人全員を避難させた。ビラトも損傷したが、沈没は免れている。
ウクライナ側がタンカーを沈没させるのでなく損傷にとどめたのは、パートナー諸国の反発を避けるための意図的な処置だった可能性がある。軍事史の著述家・研究者であるChrisO_wikiはX(旧ツイッター)への投稿で、無人艇が船尾を攻撃した点に注目し、「船を完全に沈没させるのでなく、推進機関や舵を破壊しようとしたことが示唆される」とコメントしている。
攻撃目標になる影の船団
国際制裁の対象や制裁逃れなどに関するデータベース「OpenSanctions」によれば、カイロスとビラトは、便宜上、自国以外の国に船籍を置く「便宜置籍」によって実質的な船主を隠し、活動を偽装するスキームに関与している船として特定されている。ビラトは2025年1月、米国の制裁対象となり、欧州連合(EU)、スイス、英国、カナダも追随した。カイロスは2025年7月にEUから制裁を科され、英国とスイスもそれに続いている。



