欧州

2025.12.04 08:00

ウクライナ、黒海でロシアの「影の船団」を攻撃 資金源の石油輸出をさらに圧迫

ウクライナ保安庁(SBU)がメディアに公開した無人水上艇(USV)「シーベビー」の新型。2025年10月17日撮影(Kyrylo Chubotin/Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

影の船団のリスクとコスト

ロシアの影の船団が直面するリスクは高まっているが、原因はウクライナのドローンだけではない。船自体の老朽化や管理不備もリスク要因になっている。

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ウクライナのニュースサイト「Censor.NET」によると、ノボロシースク港をたびたび訪れていたタンカー「M/Tメルシン」が、セネガル沖で11月30日に沈没した。ソーシャルメディアに投稿された動画には、船が徐々に沈んでいく様子が映っている。沈没にウクライナの関与があったのか、あったとすればどのような形でだったのかは不明だ。

M/Tメルシンは8月にロシアの黒海沿岸のタマニ港に寄港したのち、アフリカへ向かい、そこで長期間停泊していた。整備不良で保険も十分にかけられておらず、老朽化が進んでいるものも多いタンカーにロシアが依存していることは、経済リスクや環境リスクを高めている。

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一方、ドナルド・トランプ米政権がウクライナに対し、多くの識者からロシアに有利とみられている取引を押し付けようとする動きを強めるなか、ウクライナは交渉のバランスを取り戻そうとしている。ウクライナにとって、それはクレムリンに対する圧力を強めることを意味する。

米国のウクライナ支援が揺らいでいることに関して、アナリストのマイケル・ワイスはXにこう書いている。「米国がウクライナを見捨てることの意図しない結果は、米政府はウクライナ政府に『こう行動すべきだ』と口出しできる立場を、自ら弱めることになるというものだ」

ウクライナのドミトロ・クレバ前外相は米誌フォーリン・アフェアーズに寄稿した論文で、ウクライナは理想的なカードは持っていないかもしれないが、降伏を余儀なくされるような状況からはほど遠いと述べている。ウクライナは欧州を頼りにして米国の支援縮小による影響を緩和しているほか、戦場の全体的な状況が言われるほど悲惨ではないことも知っている。

クレバは、ロシアの支配下にあるウクライナ領土は2023年12月時点で約4万2000平方マイル(約10万8800平方km)だったが、1年後の2024年12月にその広さは約4万3600平方マイル(約11万2900平方km)になったにすぎないと説明した。論文が掲載された2025年5月末時点でも、ロシアの支配面積はそこからあまり変わっておらず、4万3650平方マイル(約11万3050平方km)ほどとなっている。

ウクライナの無人艇は、黒海の奥深くまで到達し、前線から遠く離れた船舶を妨害できる能力を証明した。制裁をすり抜けるために構築されたロシアの影の船団は、予想以上に脆弱なことが明らかになりつつある。その船を狙った攻撃がウクライナの海岸からさらに遠くへ拡大するのにともない、ロシアの石油取引に関わる企業や船主の「コスト計算」は変わってくる。ウクライナが影の船団をさらに積極的に攻撃するようになるにつれて、ロシア側のリスクはますます高まることになる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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