ブルームバーグ通信の報道によると、カイロスはロシアの代表的油種であるウラル原油をインドに輸送し、黒海沿岸のノボロシースク港に戻る途中だった。ビラトは年初に米国の制裁リストに追加されて以降、大半の期間は黒海西部で遊休状態にあった。
ウクライナの軍備に関するニューズレター「Ukraine’s Arms Monitor」の著者で防衛アナリストのオレナ・クリジャニウシカは以前、筆者の取材にこう述べていた。「ロシアとウクライナの間のように、これほど大規模で激しい武力紛争が起こった場合、より広範な地域全体に直接の影響が及ぶのは当然の結果です」
拡大する無人艇攻撃作戦
この戦争を通じて、ウクライナはロシアの艦船に対する海上攻撃に繰り返し成功してきた。なかでも、爆発物を搭載した無人艇による攻撃で顕著な戦果を挙げている。ただ、作戦範囲はこれまで、おおむね黒海北部に限定されていた。トルコ沖での今回の攻撃は作戦範囲の劇的な拡大を意味し、水上ドローンの航続性能が向上していることや、ウクライナが国際水域でロシアのアセットを攻撃することを厭わない姿勢であることも示した。
航続時間が長く、相当な量の爆発物を搭載するシーベビーは、ロシアの黒海艦隊などに対するウクライナの非対称海上作戦で重要な兵器になっている。ウクライナ国防省の顧問を務めた経歴を持つウクライナ安全保障・協力センター(USCC)のセルヒー・クザン会長は「海上ドローンはいまではウクライナ海軍のきわめて重要な構成要素になっていて、海での主要な打撃兵器です」と語る。
AP通信によると、SBUは10月にシーベビーの改良型を公開した。改良型は黒海全域での行動や、従来型よりも重い弾頭の搭載、AI(人工知能)を活用した目標捕捉などが可能とされる。航続距離は1000kmから1500kmに伸び、搭載可能な弾頭量は約2000kgに増え、ロシアが支配する水域を格段に深く攻撃できるようになった。
シーベビーによるカイロスとビラトへの攻撃は、ロシアの海軍艦隊だけでなく、その世界規模の石油サプライチェーン(供給網)にも代償を払わせるというウクライナの意図を反映している。ロシアの石油取引を支えようとしている企業に対して、ウクライナはその「損得勘定」を変えさせることに注力している。ウクライナのスーミ国立大学のオレクシー・プラストゥン教授は筆者の取材に、企業にはリスクと利益のバランスというものが存在すると指摘した。


