経営・戦略

2025.12.06 17:00

F1の名門「マクラーレン」復活、マーケ出身CEOが商業戦略を最優先し6800億円企業に

2025年10月5日、マクラーレンF1チームは、シンガポール・マリーナベイ・ストリートサーキットで開催されたF1シンガポール航空シンガポールグランプリにおいて、コンストラクターズ世界選手権タイトルを祝った。(Photo by Robert Szaniszlo/NurPhoto via Getty Images)

2025年10月5日、マクラーレンF1チームは、シンガポール・マリーナベイ・ストリートサーキットで開催されたF1シンガポール航空シンガポールグランプリにおいて、コンストラクターズ世界選手権タイトルを祝った。(Photo by Robert Szaniszlo/NurPhoto via Getty Images)

5年前に苦境にあったF1チームの名門マクラーレンは今、鮮やかな復活を遂げている。ザック・ブラウンCEOが率いる同チームは、レースで勝ち続けるだけでなく、スポンサー獲得でもフェラーリやメルセデスと肩を並べている。

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マクラーレンが勝利を重ね、世界コンストラクターズ選手権を連覇

マクラーレンは、10月のシンガポールGPにおいて、F1の車体製造者(コンストラクター)が獲得ポイントを争う世界コンストラクターズ選手権の王座を2年連続で手にした。ドライバーのランド・ノリスとオスカー・ピアストリがそれぞれ3位、4位でチェッカーを受けた瞬間、54歳のブラウンは、「この勝利は、現場のスタッフだけでなくマクラーレンに所属する1400人全員で祝うべきものだ」と感じたという。26年ぶりのタイトル奪還に至る長い苦難を知る彼にとって、この瞬間は格別だった。「現在のマクラーレンは、とてつもなくエキサイティングなフェーズにある」とブラウンは言う。

今季のF1は、残すところ12月7日のアブダビGPでの最終戦のみとなった。11月22日のラスベガスGPと30日のカタールGPを終えても、マクラーレンは依然としてタイトル争いの中心に残っている。ドライバーズ選手権では、マクラーレンのノリスが408ポイントで首位を維持し、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが396ポイントで2位、マクラーレンのピアストリが392ポイントで3位につけている。チャンピオンはアブダビでの最終戦で決まる見込みだ。

しかし、マクラーレンが手に入れたものは、トロフィーのみにとどまらない。サーキットの外でも、このチームは確実に勢いを増しつつある。

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かつて営業損失を出していたチームが、「コストキャップ制度」により黒字化を達成

フォーブスは2019年、前年度の収益が1億6500万ドル(約256億円。1ドル=155円換算)だったマクラーレンのチーム価値を6億2000万ドル(約961億円)と見積もっていた。評価額では上位4チームに入っていたものの、採算性は群を抜いて悪く、2018年のEBIT(利払い・税引き前利益)ベースの営業損失は驚愕の1億3700万ドル(約212億円)に達していた。

それから6年、2024年の収益が6億1400万ドル(約952億円)にまで伸びた現在、マクラーレンF1チームの評価額はかつての約7倍の推定44億ドル(約6820億円)に膨れ上がり、ランキングでも3位に浮上した。チームの営業利益も大きく伸び、6100万ドル(約95億円)を記録した。背景には、2021年から導入されたF1全体の財務体質を健全化するための「コストキャップ制度」がある。マシン開発や製造など複数領域での支出に上限を設けるこの制度のもとで、マクラーレンは利益体質の組織へと生まれ変わった。

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翻訳=上田裕資

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