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2025.12.10 07:15

世界初、ウナギの脂を無限に作り出す「自然不死細胞株」を樹立

Getty Images

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つい先日、EUがニホンウナギを含むすべてのうなぎの取引規制を提案したことが話題になった。提案は否決されたが、ウナギが減り続けていることは確かだ。日本ではタマゴからの完全養殖の研究も進められ、なんとか安定的に食べられる環境を作ろうと頑張っている。そこにもうひとつ希望の光が現れた。細胞培養によるウナギ肉だ。

東京都立産業技術研究センターと北里大学による研究グループは、あのウナギの蒲焼きからしたたり落ちるウナギの脂を、脂肪前駆細胞株により連続的に生産する技術を世界で初めて確立した。研究グループは、すでにウナギの筋肉を培養できる筋肉細胞株を開発している。それと組み合わせることで、文字どおり「脂ののった」ニホンウナギの培養肉が生産できるようになるというわけだ。

脂肪細胞へと成長し脂肪滴を貯めた細胞。
脂肪細胞へと成長し脂肪滴を貯めた細胞。

研究グループは、ニホンウナギの稚魚の筋肉組織から取り出した細胞を長期間培養して、3種類の新しい細胞株を作り出した。これは、120回以上の細胞分裂を繰り返しても、安定した増殖能力を維持している。遺伝子操作によらず、自然に無限増殖能力を獲得した「自然不死細胞株」とのこと。

細胞に蓄積された脂質の脂肪酸組成。
細胞に蓄積された脂質の脂肪酸組成。

調査の結果、これは成熟した脂肪細胞に変化して細胞内に脂肪滴を大量に蓄積できる脂肪前駆細胞であることもわかった。さらに、その細胞株が作り出す脂肪酸の組成(飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)の割合は、市販の養殖ウナギに非常に近かった。

これは細胞性食品(培養肉)なので、養殖と異なり、培養環境を調整することで「脂ののり具合の最適化」や「品質の均一化」が可能になる。研究グループは今後、製品化を目指して共同研究を進めていくということだ。ウナギの培養肉は、すでにイスラエルのForsea Foodsが開発し2年以内の商品化を目指している。面白い競争が見られそうだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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