経済・社会

2025.12.04 14:15

ハワイの鉄道が空港にも開通。それでも消えない「不安」の正体

幻となった「アラモアナセンター」駅

もともと、この鉄道開発計画は通常の開発とは逆で、郊外からじわじわと都心部に向けて工事を進めるスタイル。高架鉄道の場合は、線路を設置する用地を取得するのに時間と費用がかかるという事情もあり、容易に用地を取得できる郊外からスタートしたのだろうと推測されるが、最初の工事から20年以上たった現在も、土地の取得に難航しているというニュースが珍しくない。

そもそも、当初の予定では「アラモアナセンター」が東側の最終駅になるはずだった。アラモアナセンターは観光客がホテルのチェックイン前に立ち寄る各旅行会社のラウンジもあり、オアフ島内を巡る「ザ・バス」の乗り換え拠点でもある。ダニエルKイノウエ国際空港と、アラモアナセンターの両駅が成立して初めて、観光客に利便性のある移動手段になり得たと思う。

それが前述の予算の膨らみと土地取得交渉の失敗で、現状ではシビックセンター駅より先、「カカアコ」駅と「アラモアナセンター」駅への延伸はまったくの白紙。開通計画さえなくなってしまった。

駅に掲示されている路線図にも、開通予定は「シビックセンター」駅までと表示されている。「アラモアナセンター」駅の表示はない
駅に掲示されている路線図にも、開通予定は「シビックセンター」駅までと表示されている。「アラモアナセンター」駅の表示はない

鉄道開発がスタートした2012年頃には、最終的にハワイ大学のあるマノア地区まで鉄道を延伸して、ハワイ大学の西オアフキャンパス(カポレイにあり、現在UHウエストオアフ駅は開通済み)からマノア本校まで学生や教員が鉄道で往来できるという計画もあった。

マノア周辺には名門私立校などもあるし、教育の発展のためという大義名分が加われば、世間や議会の承認も得やすかっただろうと想像されるが、いつのまにか、そんな計画もウヤムヤになってしまった(ホノルル市は慌てて、ラグーンドライブ駅からハワイ大学マノア校行きの急行路線バスを設定したが、中途半端な印象は拭えない)。

ハワイ住民の印象としては、こうだ。

ベールに包まれまま計画が変更されて、発表される。えーそうなのだと驚いているうちに、少しずつ開通して「自動運転」や「きれいな駅」「日本製の最新車輌」などという話題に目移りしていたら、アラモアナセンター駅は「何ですか、それ?」とばかりにスルー。うーん、鉄道が通るのは周辺住民の利便性向上に嬉しいニュースのはずなのに、どうしてもしっくりと来ないのである。

次ページ > 「原っぱにポツン」という駅も

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事


advertisement