1位:イーロン・マスク
資産額:4830億ドル(約74.9兆円。前月比150億ドル[約2.3兆円]減)
●主な資産源:テスラ、スペースX、xAI、X(旧ツイッター)●年齢:54歳●居住地:テキサス州オースティン●国籍:米国
11月6日、テスラ株主総会は、マスクに最大1兆ドル(約155兆円)分の株式報酬(税引き前・制限株解除コスト除く)を付与する前例のない報酬案を承認した。この報酬は、テスラが今後10年で時価総額を8倍以上に伸ばすなど、いわゆる“火星級(Mars shot)”の成果を達成した場合に限り実行される。
一方で、マスク率いるxAIホールディングスは、評価額2300億ドル(約35.7兆円)で新たな資金調達を交渉していると報じられている。この額は、2025年3月の設立時に示された評価額1130億ドル(約17.5兆円)の2倍以上に相当し、マスクが2023年に創業したAI企業xAIと、2022年に総額440億ドル(約6.8兆円。負債含む)で買収したX(旧ツイッター)を統合した組織としての価値を含んでいる。
マスクは現在、テスラとスペースXのCEO、そしてxAIホールディングスの会長兼CTOを務めている。
彼はテスラ株の約12%を保有し、その一部をローンの担保に提供している。テスラの株主は2024年6月、現在の価値で1250億ドル(約19.4兆円)に及ぶパフォーマンス型のストックオプション付与案に賛成票を投じたが、この報酬案は2024年1月、デラウェア州裁判所の判事によって「公開市場史上、最大規模の報酬パッケージ」と評され、一度無効となっていた。さらに同年12月、その判断が再確認されたため、今後も長期に及ぶ控訴が続く見通しだ。
そのためフォーブスは、この報酬に含まれるテスラ株のオプションを暫定的に50%減額して、彼の資産に算入している。また、マスクはスペースX株の推定42%を保有している。同社の評価額は、2025年8月の未公開株の売却に際し4000億ドル(約62兆円)とされていた(この額は2024年12月時点の3500億ドル[約54.3兆円]から上昇した)。
南アフリカ出身のマスクは、18歳になる前にカナダへ移住し、複数の仕事を経てオンタリオ州のクイーンズ大学に入学。その後ペンシルベニア大学へ編入し、経済学の学士号を取得した。
2000年には、自身が共同創業したオンライン銀行X.comを、ピーター・ティールらが創業した競合企業と統合し、後のPayPalとなる事業を形づくった。PayPalは2002年にeBayに14億ドル(約2170億円)で買収された。マスクはその後2002年にスペースXを創業し、2004年には創業から1年後のテスラに投資家として参加。後に共同創業者の肩書きを与えられた。2008年にテスラCEOへ就任し、2010年に同社を上場させた。
また、2015年にはサム・アルトマンらと非営利団体としてOpenAIを設立したが、3年後に経営権争いに敗れて役員を辞任。その後、両者は現在に至るまでSNSやインタビューを通じて応酬を続けている。
マスクは、2021年9月に初めて世界一の富豪となり、2022年の大半を首位として過ごしたものの、同年12月に首位から陥落。2023年6月8日に再び世界一に返り咲き、その後の2023年のランキングを通じてトップを維持した。2024年1月末に再び2位へ下がったが、同年5月末に首位へ復帰して以降、現在もその座にとどまっている。2025年10月には、一時的に世界で初めて資産5000億ドル(約77.5兆円)に達した人物となった。
2位:ラリー・ペイジ
資産額:2620億ドル(約40.6兆円。前月比300億ドル[約4.7兆円]増)
●主な資産源:グーグル●年齢:52歳●居住地:カリフォルニア州パロアルト●国籍:米国
ペイジが世界第2位の富豪になるまでの道のりは長かった。フォーブスが2025年版の「世界長者番付」を確定した3月の時点で、彼の資産は推定1440億ドル(約22.3兆円)で順位は7位だった。10年前の順位は19位だった。
ペイジは1998年、同じスタンフォード大学博士課程に在籍していたセルゲイ・ブリンとともに検索エンジン「グーグル」を共同創業した。彼がCEOを務めた期間は2度あり、最初は2001年まで、2度目は2011年から2015年までだった。現在は、親会社アルファベットの取締役として経営に関わり続けており、依然として重要な議決権を持つ大株主でもある。また、製造業向けAIに注力する新会社Dynatomics(ダイナトミクス)を立ち上げたと報じられている。
2024年末には、米司法省がグーグルのオンライン支配力を抑制するため、Chromeブラウザー事業の売却を求めた。この要求に対し、グーグルは「消費者利益や米国の技術競争力を損なう」と反論。翌年1月、アルファベットCEOのスンダー・ピチャイがドナルド・トランプ大統領の就任式に姿を見せた背景には、この問題があった可能性がある。結局、この訴訟は近年で最大の独占禁止法裁判となったが、2025年9月、連邦裁判所はChrome売却を求めない判決を下した。
また、ペイジはかつてPlanetary Resources(プラネタリー・リソーシズ)にも初期投資家として関わっていた。小惑星の採掘を目指す企業として注目された同社は、2018年にブロックチェーン企業ConsenSys(コンセンシス)に買収された。
3位:ラリー・エリソン
資産額:2530億ドル(約39.2兆円。前月比670億ドル[約10.4兆円]減)
●主な資産源:オラクル●年齢:81歳●居住地:カリフォルニア州ウッドサイド●国籍:米国
2025年1月、ドナルド・トランプが大統領に就任した翌日、エリソンはホワイトハウスに姿を見せた。この日、トランプは「スターゲート計画」を発表し、エリソン率いるオラクルやChatGPTを開発したOpenAI、日本のソフトバンクを率いる孫正義、そしてアラブ首長国連邦(UAE)の投資ファンドMGXらが参画すると明かした。このグループは、4年間で5000億ドル(約77.5兆円)を投じ、主にデータセンターを中心としたAIインフラを米国内に構築する構想だ。
8月には、映画制作会社スカイダンス・メディアを率いる息子デヴィッド・エリソンとともに、パラマウントとの合併を実現した。この取引により、エリソンは新会社の議決権の約77.5%を掌握する立場になった。現在、パラマウントはワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収を検討する少なくとも3社のうちのひとつとみられている。
1977年にソフトウェア企業オラクルを共同創業したエリソンは、2014年までCEOを務め、現在は会長兼CTOとして経営に関わり続けている。2025年9月、オラクルのクラウド事業(主にAI関連)の収益見通しが市場の予想を大きく上回ったことで、株価が1日で36%急騰し、エリソンの推定資産は史上2人目の4000億ドル(約62兆円)台に到達。マスクとの差は400億ドル(約6.2兆円)に縮まった。
しかしその後、オラクル株は約40%下落した。AIバブルの懸念に加え、クラウド事業の収益性やOpenAIとの提携依存度に対する分析が市場で議論され、評価が揺らいだことが背景にある。
エリソンは不動産にも積極的で、2012年にはハワイのラナイ島の98%を3億ドル(約465億円)で購入。そのほか、カリフォルニアやネバダ、フロリダにも複数の高級不動産を所有している。テスラの初期投資家でもある彼は、2018年から2022年8月まで同社の取締役を務めた。
4位:ジェフ・ベゾス
資産額:2450億ドル(約38兆円。前月比100億ドル[約1.6兆円]減)
●主な資産源:アマゾン●年齢:61歳●居住地:フロリダ州マイアミ●国籍:米国
11月、ニューヨーク・タイムズは、ベゾスが2021年にアマゾンCEOを退任して以来、初めて実務に関わる役職に就くと報じた。彼はAIスタートアップ「Project Prometheus(プロジェクト・プロメテウス)」の共同CEOを務めるとされた。同社はすでに約60億ドル(約9300億円)を調達し、エンジニアリングと製造領域に焦点を置くとみられている。
ベゾスは1994年にアマゾンを創業し、2021年7月までCEOを務めた(現在もエグゼクティブ・チェアマンの肩書きを維持)。同月に彼は、自身が設立し数十億ドルを投じた民間宇宙企業ブルー・オリジンのロケットで宇宙へ飛行した。同社は今春、女性のみのクルーを乗せた飛行も実施しており、その搭乗者には歌手のケイティ・ペリーやCBS「モーニングズ」共同司会のゲイル・キング、そしてベゾスの2番目の妻ローレン・サンチェスが含まれていた。
アマゾン創業以前の高校時代にマクドナルドで働いたベゾスは、プリンストン大学を卒業。ニューヨークのヘッジファンドD.E. Shawで勤務した経験を持つ。アマゾンは当初オンライン書店としてスタートしたが、やがてオンライン小売を牽引し、クラウド事業や映像制作へと事業を拡大していった。
ベゾスは2018年から2021年まで、フォーブスの世界長者番付で首位を維持した。その後2022年に2位へ後退し、2023年から2025年にかけて3位に位置している。
2019年、ベゾスは当時の妻マッケンジー・スコットと離婚し、和解の一環として彼女にアマゾン株4%を譲渡。ベゾスは12%を引き続き保有した。その後、彼は株式の売却と寄付を進め、現在の保有比率は約8%となっている。フォーブスは、アマゾンの上場以来、ベゾスが売却した株式の総額が490億ドル(約7.6兆円)超にのぼると試算している。彼はまた、自身の投資会社Bezos Expeditions(ベゾス・エクスペディションズ)を通じて、エアビーアンドビーやワークデイなど、幅広い企業に出資してきた。


