3. 模擬対立を実施する
2人の幹部に対立する立場で、現実の問題について議論させる。他の全員がその議論を見守る。どちらが正しいかを決めるためではなく、意見の相違がどのように生じるかを観察することが目的だ。これは何かが起こった時のチームの耐性を即座に診断する方法だ。レンシオーニはこれを「生産的な不快感」と呼ぶ。
4. 10分間の事前・事後検証を実践する
重大な決定をした後、10分間かけて見落とした点はないだろうか、 指摘をはばかる兆候はなかっただろうかと問うといい。
その後、一歩先を行く。筆者がプレモーテム(起こりうる失敗や問題を事前に予測する事)の先駆者である意思決定科学者ゲイリー・クラインと話した際、優れたチームは失敗を事前に想定するとクラインは語った。「1年後、これは失敗する。その理由は何だろう」と問うと、雰囲気が変わる。事後対応ではなく熟考する習慣を生む。
短い率直な事後検証と先を見据えたプレモーテムを普段から行うチームは、熟考が習慣になる。レンシオーニの見解も同じで、熟考を伴わない説明責任は成長ではなく、業績管理に変わる。
5. 議長を交代制にする
月に一度、CEO以外の誰かに会議を主導させる。進行能力を試すためではなく、権力を他の誰かに移すことが目的だ。トップが変われば、発言する人も変わる。聴く姿勢も同様だ。健全なチームは「権力を弱め、当事者意識を強化する」とレンシオーニは話している。この単純な議長の交代が、出席者の姿勢を変える。
6. 次の重要な判断のための検証チームを創設する
新たな取り組みを承認する前に、幹部2人を選んで厳しく検証させる。役割は取り組みを阻止することではなく、評価だ。表立って意見の相違を処理すれば、目につかないところでの機能不全を防げる。レンシオーニは信頼を基盤とした対立は、ある種の思いやりだと指摘する。
以上の取り組みは、CEOが率先して行わなければうまくいかない。私が目にしたうまくいった例は全てトップが不確実性を認め、過ちを明らかにし、助けを求めた時に事態が動き始めた。レンシオーニはこの点について、「リーダーこそが最初に弱さをさらけ出すべきだ」と明言している。「CEOが踏み込まなければ、誰も踏み込まない」。脆弱性は上へではなく、下へと広がるだけだ。
戦略に関する文書では、意見の一致は完璧に見える。だが会議室での意見の一致は、口に出す準備ができていない事柄を覆い隠すことが多い。
レンシオーニが、最も的確に言い当てている。「リーダー陣がチームでなければ、組織もチームにはなれない」。そしてゲイリー・クラインが私に思い出させてくれたように、先を見通す力、つまり曲がり角の先を見通す能力は、勇気を持ってうまくいかない可能性を想像する時にのみ存在する。
混乱を乗り越えるチームは、穏やかであることはほぼない。そうしたチームは議論し、混乱を表面に出し、緊張の力を利用する。レンシオーニの結論はこうだ。「優れたリーダー陣は、互いに遠慮しない。恥ずかしい出来事を表にすることを恐れない。また、仕返しを恐れずに過ちや弱点、懸念を認める」
この種の正直さは、決して心地よいものではない。しかし視界を良好にする。リーダーは自分の立ち位置を真に把握する。大半の経営陣に必要なのは、意見の一致を確認する会議や新たな言葉ではない。会議で真実が葬られることがないようにすることだ。それが実現したとき、信頼や説明責任、方向性といった他の全ての要素が息を吹き返す機会が生まれる。


