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2025.12.09 17:15

優秀なのに孤立する役員、経営チーム再建に効果抜群のCEOが生み出す「対話」

imagenavi/GettyImages

「人事異動で配置を変える」「役員制度や仕組みをかえる」──CEOがこうしたハード面での飛び道具を用いることによって、一時的に組織の空気は変わります。しかし、それでも「なんとなく横(他の役員、その専門領域)には口を出さない」という文化は、組織に残り続けます。本質的な問題は改善しないままなのです。

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鈴木:このままではまずいとは思うけれど、売上にも影響は出ていないし、経営チームは一応機能している。問題が眼に見えるかたちで現れていないから、先送りしてしまう。そんな感覚なのでしょうか。

CEO:まさにそうです。

鈴木:そうですよね。急には困らない。ですが、経営とは「そのままでは近い将来に起こりうるリスクを、いかに見つけて対応するか」ではないでしょうか。あるクライアントは「今、対応しないと、5年後、10年後に大きなリスクになることは何か?」を、朝から晩まで考えているとおっしゃっていました。

あなたのチームをこのままにしておくと、5年後、どんなリスクがありそうですか?

CEO:……境界を越えた対話が、ますます減っていくと思います。多様な視点が生かされず、変革の芽が摘まれていく。やがて現状維持が常態化し、挑戦しない。そんなネガティブなカルチャーが根をはってしまうのだと思います。

鈴木:「対話」の有無が、組織の進化や変革の鍵だと思われているのですね。ちなみに今、あなたの経営チームに対話はどのくらいあると感じていますか?

CEO:……あるようで、ないですね。会議では報告や意見交換はしますが、異なる意見を出し合うことはほとんどありません。

チームの中にあるのが「会話」なのか「対話」なのか、実は大きな違いがあります。

会話とは、共通点をもとにコミュニケーションを取るものです。「今日は寒いですね」「ええ、とても」といった共感や、「最近ゴルフの調子はどう?」「結構いいんですよ」といった互いの関心領域であるトピックを共有して、話をします。

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一方で、対話とは「違い」に焦点を当てるものです。「私はこう思う」「あなたはそう思う」と、自分と相手の違いを顕在化させながらも、意見を衝突させることなく、新しい理解、新しいものの見方を両者に生み出していくものです。対話は、視点の創造です。リーダーが「異を歓迎する姿勢」を示すことで、チームの文化は変わります。

トップ自ら違いを顕在化させる「対話」の場をつくり出せ

鈴木:例えばあなたが会議で「私はこう思う」と発言したとき、役員が「ごもっともです」と同調したら、こう返してみてください。

「いや、君には君の考えがあるはずだ。私に同調せず、自分の経験に基づく意見を教えてほしい」と。その瞬間、役員は「新しいコミュニケーションが求められている」と察知するはずです。

そして、「反対せよと言っているわけではないが、『異見』(他と違った考え)をぶつけ合い、新しい視点をつくり上げよう」と加えてください。経営チームに、対話の空気が流れはじめます。チームの対話は、トップがつくり出せます。トップがその気になれば、明日からでもチームのコミュニケーションは変わるでしょう。

CEO:チームは私次第、ですね。まずは、次の経営会議で「私はこういう会議を望む」と伝えて、多様な意見を重視する姿勢を示してみます。

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文=鈴木義幸

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