政治

2025.12.03 12:30

ビジネスに重点を置く「米露の秘密協定」はトランプ米大統領の世界観を反映

米アラスカ州アンカレッジの米軍基地で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)を出迎えるドナルド・トランプ米大統領。2025年8月15日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

米アラスカ州アンカレッジの米軍基地で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)を出迎えるドナルド・トランプ米大統領。2025年8月15日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

ウクライナ和平案の背景にあるビジネス上の動機に関する米紙ウォールストリート・ジャーナルの記事が、世界を騒がせている。11月28日付の「『戦争ではなく金儲けを』トランプ氏の真の和平案」と題する記事には、「ロシアはビジネスを通じた和平を米に提案、欧州の失望をよそに大統領と特使は賛同」との副題が付いている。よくありがちなことだが、見出しは(完全にではないが)やや的外れで、欧州が主要な問題であるかのような書き方になっている。だが、今回の騒動の大部分は、米国内の怒りから生じている。筆者は日頃から国際政治について執筆しており、本稿も同様だ。とはいえ、文脈を簡単に概説しておくことは必要だろう。

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要約すると、ウォールストリート・ジャーナルの長文記事は、数カ月に及ぶ米露高官の秘密会談が合意形成につながったとしている。その内容は、ウクライナとの和平を実現する見返りに、米企業が北極圏を含むロシア全土のエネルギー資源、原材料、重要金属の採掘権を独占的に得るというものだ。米企業はウクライナとロシアの復興に向けた投資を主導し、「平和の商業的保証人」となる。欧州の銀行に凍結されたロシア資産は事業資金として大きな役割を果たす。同記事は、制裁対象となったロシア人が会合のために米国に入国することなど、さまざまな政治的争点を取り上げている。どうやら、欧州と英国の情報機関が、これに関して厳重に管理されていた情報を漏らしたようだ。

同記事はまた、この包括的な考え方は、米国のドナルド・トランプ大統領の世界観と一致していると指摘している。すなわち、関係者全員の利益を通じて古い憎しみを葬り去るという考え方だ。筆者が数カ月前に米誌ワシントン・エグザミナーで「トランプ大統領のガザに関する控えめな提案」と題して論じたように、同大統領の構想は(ガザに限らず)アイデンティティーは先住性から解放されるというものだ。最終的には、誰もが世界中のあらゆる不動産の株式を持つようになる。特定の土地に縛られるより、その株式に結び付いた方が豊かになれる。トランプ大統領は既に、アルメニアとアゼルバイジャンの和平合意で、米国による安全の保証の下で豊富なビジネス機会を提供することで、この手法を効果的に適用した。問題は、人間が利益より、自らのルーツである土地や故郷の風景を尊ぶ傾向にあることだ。つまり、ウクライナ人はロシアが武力によって奪った領土から利益を得るという考えを拒否するだろうということだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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