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2025.12.03 17:15

「日本の卵」企業が世界を制す!スモール・ジャイアンツ優勝レポート【#1】

スモール・ジャイアンツアワード ファイナリスト企業の7社と、「LOVED COMPANY賞」受賞企業の2社。左から、側島製罐・石川貴也、河野製作所・河野淳一、くしまアオイファーム・奈良迫洋介、FSX・藤波克之、ナベル・南部隆彦、日本原料・齋藤安弘、A-GIRL'S・山下智広、石川樹脂工業・石川勤、澤村(SAWAMURA)・澤村幸一郎。

スモール・ジャイアンツアワードは、グローバル市場の開拓、地域への貢献、稼ぎ続ける力の3つを評価のポイントに掲げている。ナベルが圧倒的だったのは海外への展開だ。1992年にマレーシアに初めて選別装置を納品して以来、現在では世界78カ国に装置を輸出している。海外子会社は上海に2社、マレーシアに1社ある。今年12月には、1時間に24万個もの卵を選別できる装置を米国に納品する予定だという。

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プレゼンに臨んだ副社長の南部隆彦は「グループ売上高はすでに100億円を超えている。ずっと国内売上高が引っ張ってきていたが、ここ数年で海外売上高の割合がほぼ半分になった。これは私の悲願で、もっと伸ばしていきたいと思っている」と力を込めた。

またこれまで、ナベルの「主戦場」は選別包装施設だったが、近年は将来卵を産むひなを育てる孵化場用に孵化途中の卵の検査装置を開発したり、養鶏場用の生産管理システムを構築するなど、産業の川上から川下まで手を広げている。

ナベルの「すごさ」はこれだけではない。「気に入る製品がなければ、自分で作ればいいじゃないか」(南部)との号令のもと、インクジェットプリンターや工場で使う無人搬送車、クラウドシステムまで社内で開発してしまったというから驚きだ。特許は登録済みのものだけで200件以上、出願中まで含めると700件を超える。

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「我々の技術力の源泉は、日本が生で卵を食べる国だからにほかならない。間違いなく日本の卵は世界最高の品質だ。そして皆さん、消費者のクレームも世界一だ」

南部は技術力だけではなく、軽妙な語り口で聴衆の心をつかんだ。南部のユーモアあふれるプレゼンに会場は度々笑いに包まれた。審査員を務めた早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄は「M-1グランプリの大トリのようだった」と評した。

質疑応答では、入山が「ひとつの産業の全ての製造プロセスに設備機器を入れている会社が地球上にあるだろうかと考えてみたが、もしかするとナベルだけなのでは?」と水を向けると、南部は「厳密には進出し始めたばかりのところもあるが、『ゆりかごから墓場まで』のスローガンでやっている」と切り返し、最後まで会場をわかせた。

グランプリの発表後、審査員を代表して講評を求められたスノーピーク会長の山井太は、「テクノロジーを集積させ、隙のないシステムを作り上げた。IT力も使って必要な製品を全て内製するなど徹底的にやっていて驚いた。審査員たちの評価も過去最高だったと思う」と称えた。

トロフィーを南部に手渡したForbes JAPAN編集長の藤吉雅春は「プリンターまで自社で開発していて、ある意味『狂っているな』と。このおかしさが挑戦する人を勇気づける。素晴らしい企業・経営者として、世界に羽ばたいてもらいたい」と激励した。

確かな技術力と「無謀さ」を併せ持ち、常人の想像を超えていくナベルにとって、売上高1000億円は決して夢ではない。


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アワード当日に実施されたファイナリストによるプレゼンテーションの様子については、後日、公開予定!

文=中居広起 写真=加古伸弥

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