スマートフォンのゲームは、始めるとやめられなくなる。つい長時間続けてしまって、目や肩がバキバキに凝る。それだけならまだしも、近年では子どもの脳の発達にも影響するという報告もある。だが、ゲームが面白すぎるからいけないとメーカーを責めるのは違う気がする。そこで九州大学は、8万人以上のプレイヤーの協力である画期的な「秘策」を編み出した。
九州大学システム情報科学研究院の中村優吾助教らによる研究グループは、全世界の8万4325人に人気ゲーム『Flying Gorilla』を1カ月間プレイしてもらう実験を行った。そこでは、新しいレベルに進むときのデータの読み込み時間を意図的に延長した。また、色のないグレースケールの画面も用意した。そして、待ち時間を、0秒、1秒、5秒、10秒の4段階に設定し、それにグレースケール画面を組み合わせた計7通りの条件をランダムに提示した。

待ち時間を長くすると、自然に区切りがつき、遊び続ける衝動が和らげられるという。また画面をグレースケールにすると、視覚刺激が抑えられて没入感が低下し、ちょっと気持ちが落ち着くというわけだ。
その結果、待ち時間10秒とグレースケールの組み合わせが、もっとも強い抑制効果をもたらすことがわかった。この条件では、1日の平均プレイ時間が最大で30.8パーセント短縮し、継続率が最大で40.4パーセント低下した。
中村助教は、「電車で電波が悪くなると自然とスマホ利用をやめたり、ふと休憩に入ったりする経験があります」と話す。これは、そうした「ちょっとした不便さが行動をやさしく調整する仕組み」だという。これまでゲームのやり過ぎを制御するのは、スマホの機能であったりゲーム以外のツールであったりしたが、ゲーム側からアプローチする新しい設計指針になるとのこと。
いかに面白いゲームを作るかを競っているゲームメーカーが、プレイする気をなくさせる機能を取り込むのは矛盾しているように感じられるが、みんなが健康的に楽しく節度を持ってプレイを続けられる工夫なら、ゲームデザインと矛盾しないはずだ。



