スタートアップの「検死サイト」Autopsyが面白い

dolgachov / Bigstock



スタートアップが失敗すると、外部からその様子を見ていた者は急いで結果をリスト化し、ユーザーがプロダクトを使わなかったのか、資金が尽きたのか、CEOが未熟だったのかなど、原因を分析しようとする。

スタートアップの墓場とも言うべきAutopsy.ioは、こうした疑問に対する答えを提供してくれるサイトだ。今年立ち上がったばかりのAutopsy.ioには2006年以降に経営が破綻したテック系スターアップ112社がリストアップされている。

サイト内には、創業者自身が失敗の原因を説明した記事のリンクが掲載されている。例えば、iPad専用レーシングホイールを最初に開発したKOLOSや、カスタマーサービス向けメッセージアプリのFastrが失敗した理由を知りたければ、Autopsyが答えを教えてくれる。

このほど、セマンティックソフトウェア企業のExpert Systemは、増え続けるAutopsyのデータを解析し、スタートアップが失敗した理由を示すワードを抽出して、それらに共通するテーマを見つけ出した。Expert Systemは、起業家たちが先人たちの失敗から学べるよう、分析結果をフォーブスに提供してくれた。

起業家の多くはマーケティングや売上、従業員の扱いに苦慮している。しかし、Expert Systemが抽出した、スタートアップの失敗要因トップ10に、これらのワードは含まれていない。Expert Systemの解析方法は、「失敗する」や「失敗」というワードが含まれる文章に、他にどのようなワードが使われているか調べるというものだ。

ここで得られた結果は非常に興味深い。「プロダクト」が15回使われていたのに対し、「従業員」、「マーケティング」、「売上」はそれぞれたったの2回しか使われていなかったのだ。このことは、スタートアップが抱える問題の多くは、プロダクトが原因であることを示している。

Expert Systemがテキスト解析を行ったところ、「お金」も重要な失敗要因であることが判明した。結局のところ、大半のスタートアップが最終的に事業を閉鎖するのは、単純に資金が底をついたか、次の資金調達の見込みがないときだということだ。「お金」、「資本」、「資金調達」というワードは、Autopsyに掲載されているスタートアップの78%が使っている。「プロダクト」は少し減って66%、「アイデア」は65%、「チーム」は55%、「投資家」や「VC」が50%だった。


残念ながら、今回のデータ解析では、例えば「お金」というワードの背後にある事情が、果たして資金調達に失敗したのか、キャッシュフロー管理に問題があったのか、売上が事業を維持するレベルに達しなかったのかまではわからず、詳細については、ケースバイケースで分析しなくてはならない。

レポートからわかるのは、起業家たちが失敗の要因として特定の問題を挙げている点だ。それらを示すワードは合計で196回使われており、その半分以上を占めたのが、「失敗」(92回)や「判断ミス」(39回)という経営判断に関するものだった。その他には、事業運営が「非常に困難になった」と述べているケースが59回あった。

Autopsyのテキストデータからは、多くのスタートアップがこれまでにないモノやサービスを生み出そうと試みたものの、彼らの願いや、世の中に約束したことを実現できなかったことが読み取れる。

最も多く使われている動詞のトップ5は、「作る」、「築く」、「機能させる」、「欲する」、「スタートする」で、これらは全てプロダクトの創造を表すワードだ。一方で、「ローンチする」(102回)、「販売する」(80回)は、「実現する」(27回)や「実行する」(18回)よりもはるかに多く使われており、実際にプロダクトを立ち上げることの難しさをうかがわせる。

もしかしたら、スタートアップの多くは、プロダクトに集中し過ぎて、エンドユーザーのニーズや、市場に出すまでの段取りを十分に精査していないのかもしれない。

「プロダクト」というワードが合計で454回使われているのに対し、「顧客」は202回、「市場」は176回と、はるかに少ない回数しか使われていなかった。

文=ブライアン·ソロモン(Forbes)/ 編集=上田裕資

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