第三の力は、いかなる職場でも求められる「人間関係力」であり、「人間力」の土台となる力であるが、当学園では、次の「五つの力」を教えている。
1.相手の心に正対して対話をすることができる「正対コミュニケーション力」、2.相手の無言の声に耳を傾けることができる「非言語コミュニケーション」3.問題に直面したとき、他人や環境の責任にせず自分の成長の課題として受け止めることができる「課題アクセプタンス力」4.人間関係がおかしくなったとき、自ら心を開いて修復できる「和解アクション力」、5.自分の心の中のエゴの動きを見つめることができる「自我マネジメント力」。
この「五つの力」を身につけた人材は、職場で周りから信頼され、活躍するだけでなく、いずれ、マネジメントや経営の道を歩んでいくことになるだろう。
第四の力は、生涯、成長を続けていくことができる「成長持続力」である。当学園では、このための中核技法として、仕事の経験を反省を通じて振り返り、自身の成長の課題を発見し、自己改革を続けていく「リフレクションの技法」を教えている。
第五の力は、生涯を通じて自立した人生を送るための「自分会社力」である。すなわち、たとえ会社に勤めても、「この会社が自分を養ってくれる」という甘えや幻想を持たず、生涯を通じて「自分」という会社の経営者として生きていく力である。当学園では、これを「マイ・カンパニー力」として、入学した直後から、すべての学生に教えている。
こう述べてくると、多くの読者は、これらの力は、これから実社会に出る学生だけに求められる力ではないことに、気がつかれるだろう。
然り。読者が五十代の会社員であっても、人生百年時代、いずれ新たな職場に向かうことになる。
その第二の人生を輝くものにするために求められるのも、この「五つの基礎力」に他ならない。
田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国8,800名の経営者が集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など、国内外150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp


