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2025.12.09 14:00

人に好かれたいなら小さな頼み事をしよう 「ベン・フランクリン効果」を心理学者が解説

Shutterstock.com

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私たちの多くは、温かさが寛大な気持ちにつながるのであって、その逆ではないと思い込んでいる。それは直感的に理解できる順序だ。私たちはまず人を好きになり、それからその人に手を貸すことを選ぶ。だが専門誌『Fudan Journal of the Humanities and Social Sciences』に掲載された研究によると、その逆もあるのだという。興味深いことに、これは「ベンジャミン・フランクリン効果」として知られている。誰かの頼みをきいた後、それまで相手に対する気持ちは中立か無関心だったにもかかわらず、その人に対し好意を感じ始めるというものだ。

この現象の名称は、米国で「建国の父」と呼ばれるベンジャミン・フランクリンにちなんでいる。フランクリンは政敵を懐柔するために小さな頼みごとをしたという逸話がある。例えば、フランクリンはある男性に珍しい本を貸してくれるよう頼んだことがある。そのライバルの男性は承諾し、その瞬間からフランクリンに対してはるかに好意的になり、積極的にフランクリンと付き合い、好感を抱くようになった。

この記事では、活用度の高いこの効果の仕組みと、それをどのように活用できるかについて説明する。

「ベン・フランクリン効果」の仕組み

前述の研究にあるように、心理学者らはこの直感に反する社会的変化の根底にある認知メカニズムが、実は認知的不協和であることを突き止めた。簡単に言うと、認知的不協和は、自分の行動が信念と一致しないときに起こる。そして、この不一致がもたらす不快感を軽減するために、私たちの心は無意識のうちに態度を調整する。

ベン・フランクリン効果では、あなたが特別な感情を持たない、あるいは否定的に受け止めている人を助けた場合、あなたの脳は「嫌いな人のためにわざわざ行動しない。だから相手を好きにならなければならない」と納得しようとする。この精神的な修正が、かなり大きな影響を生む。つまり、信頼関係や信用に多大な影響を与える。

この概念は、著名な研究者ジョン・ジェッカーとデビッド・ランディが1969年に行った実験が専門誌『人間関係』に掲載された後、科学的に大きな支持を得た。具体的には、実験参加者のうち、実験者の頼み事をきいた人、あるいは実験者に頼み事をするよう指示された人は、頼み事をきいてもらった人、あるいは全くやり取りのなかった人よりも実験者を「好ましい」と評価した。

この研究でジェッカーとランディは、ベン・フランクリン効果を証明することができた。誰かに手を差し伸べる行為は、実際にその相手に好意を抱かせるのだ。これは、認知的不協和に関する数十年にわたる先行研究や、その後行われた研究とも一致しており、行動が信念を形成する可能性が高いことを強く示唆している。

つまり、寛大な心でもって行動するとき、私たちは無意識のうちに何らかの形で相手のことを気遣っているに違いないと自分に言い聞かせているのだ。

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翻訳=溝口慈子

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