濃霧が立ち込めると、操縦士が障害物や塹壕、さらには目標自体を見失い、ドローンの墜落や誤った地点への攻撃につながりやすくなる。FPV自爆ドローンは地面近くを高速で飛行するため、一瞬でも視界が不明瞭になると攻撃への直行が不可能になってしまう。
悪天候に乗じるロシア軍
悪天候によるドローン運用への影響は、ウクライナの防衛に深刻な問題を引き起こしている。マンパワー(人的戦力)不足に直面しているウクライナ軍は、小型ドローンの高密度のネットワークを活用して、防御線の前方に「キルゾーン(撃破区域)」をつくり出している。これらの軽量のFPVドローンは砲兵と連携し、ロシア軍の突撃部を防御線への到達前に撃破するのに使用されている。だが、悪天候のためにドローンが飛行不能になると、こうした防御の仕組み全体が弱体化してしまう。
実際、ロシア軍はそうした状況を利用しており、キルゾーンを突破し、数的優位を生かしてウクライナ軍部隊と直接交戦している。ソーシャルメディアに投稿された動画には、ロシア軍部隊が霧で移動を隠蔽しながら、オートバイやピックアップトラックなどでポクロウシク市内に侵入する様子が映っている。ポクロウシクは激しい攻防戦が続いてきた都市であり、過去数カ月、この戦争全体を通じても最も激しい戦闘のひとつが繰り広げられている。
Russians entering Pokrovsk under the cover of thick fog. pic.twitter.com/ijOb5dcyb2
— ayden (@squatsons) November 10, 2025advertisement
ロシア軍はウクライナ南部ザポリージャ州のフリャイポレに接近する際にも、霧や低地を利用していると報告されている。ロシア軍は最近、ドネツク州で濃霧に乗じて渡河も試みたが、これは失敗に終わっている。ドローンが飛行できない状況でロシア軍は複数の方面でかなりの前進を果たし、ウクライナ側の防御線を押し下げている。
ウクライナはどう対処すべきか
天候は常に移り変わるものであり、とくにロシアとウクライナにまたがる地域では変わりやすいことで悪名高い。したがって戦場での気象条件も急速に変わり得る。事実、ウクライナ側は天候の改善を機にキルゾーンを再構築し、進撃してきたばかりのロシア軍部隊を無防備な状態にさらしてもいる。


