日本企業の勝ち筋は「エイジテック」
今、日本が世界で勝てる可能性が高いのは、「シニア社会」をターゲットにしたエイジテック領域とみている。健康寿命を延ばすヘルスケアも極めて重要であるが、個人的には60歳台半ばから80歳台のアクティブシニア世代のクオリティオブライフを劇的に向上させる仕組み・インフラ・プロダクト・サービスの創造が今後シニア社会に加速的に突入していく日本社会にとって極めて重要な産業になるとみている。
その実現には、ロボティクス、AI、デバイス、そして“おもてなし”ソフトウェアを組み合わせた総合ソリューションを実現し、世界一のポジションを狙うのである。高齢化はもはや社会課題ではなく巨大市場である。
世界のエイジテック市場は近い将来300兆円規模に至るとされ (Forbes 「’Age-Tech’: The Next Frontier Market For Technology Disruption」)、日本がその2割を取れば60兆円産業になる。こうした「規模の議論」を正面から行うべき時期に来ている。しかも、東南アジアやアフリカ諸国は日本と比較してまだまだ平均年齢は低く、現在では若い国々ではあるが数十年すれば平均寿命の伸長と相まって、シニア層の比率が上がってことは間違いなく、日本でシニア向けのプロダクトやサービスを先駆けて構築しておけば、シニア社会のプロダクトやサービスを輸出産業として期待できるのである。
教育・研究の現場にも必要とされる変革
教育や研究の現場でも変革が必要である。AIに任せられる部分は任せ、人間は「気づき・発想・探索」に集中する。生産性だけを追うのではなく、探索的活動を組み込む仕組みが、真のイノベーションを生む。「生産性のジレンマ」に陥らないよう、AIを“共に考えるパートナー”として使いこなす力が問われている。
AIは単なる道具ではない。人間が発想を飛ばし、未来を構想するための“思考増幅器”である。生成AI時代においてリーダーに求められるのは、AIに使われる側ではなく、AIを使って「新しい価値を設計する側」に立つことだ。日本企業が再び世界で輝くためには、“創る人”を中心に据えた経営へと発想を転換する必要がある。
挑戦を恐れず、失敗を許容し、未来をデザインする。それが、生成AI時代の日本が世界に示すべき「再起動の条件」であろう。


