経済・社会

2025.12.02 14:15

トランプをはね返す習近平の『万里の長城』 日本を助ける余裕もなく

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

この状況について、前出の外交筋は「第2次トランプ政権誕生後の米中のやりとりを見ていると、中国側の周到な研究・準備とぶれない対応が目立つ。トランプ氏はその場しのぎで対応が大きく揺れている」と指摘する。米国は4月に相互関税を発表し、9月にも制裁対象中国企業リストの事実上の拡大を発表したが、その都度、中国側による報復関税やレアアースの輸出規制などの反撃に遭った。米国はその度に「対話による解決」や「エスカレーションにつながる措置の回避」で中国と合意する羽目に陥った。

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この外交筋は「中国は過去、日本や韓国にはレアアース規制や中国人観光客の訪問自粛など、報復措置をシステムとして動かしてきた。第2次トランプ政権になり、この報復システムを米国にも拡大したと言える。それだけトランプ政権の再登場を予測して研究と準備を万全にしてきたのだろう」と語る。トランプ氏が何度も制裁や関税を仕掛けても、その都度、中国が事前に準備した厚い壁に阻まれて撤退を余儀なくされているという印象だ。

また、外交筋は「中国は今後、日本にもいろいろな措置をとってくるかもしれない」と語る。中国のやり方としては、まず「中国経済に影響しない措置」から始め、それでも相手が屈服しない場合は、徐々に「自らも多少の出血を覚悟した措置」に移行することが予想されるという。確かに中国人観光客の訪日自粛要請は中国経済に影響しない。日本水産物の輸入禁止緩和措置の停止も、もともと輸入していなかったから問題ないというわけだ。

では、中国はどのような手を打ってくるだろうか。外交筋によれば、「中国も多少の出血を覚悟する措置」として、レアアースの輸出規制、2026年末までを期限とした日本人の中国入国ビザ免除措置の停止、日本製品の不買運動が考えられるという。

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ただ、レアアース輸出規制は、やりすぎると中国の強みを消してしまう。中国がレアアース市場をほぼ独占しているのは「低価格」を武器にしているためで、規制をやりすぎると、他国が国策としてレアアースの採掘や精錬事業を進めてしまうからだ。また、ビザ免除の停止は日本による対抗措置を呼ぶ。日本での経済活動を希望する中国企業に冷水を浴びせかねない。日本製品の不買運動も中国人の不興を買う可能性がある。同筋は「スシローやサイゼリア、日本のアニメが好きな中国人はたくさんいる。こうした人々の怒りを買うと、反日運動が反政府運動に化けかねない」と指摘する。

トランプ氏の援軍があまり期待できない日本としては、防衛力を強化しつつ、日中関係の一日も早い鎮静化を目指すしかないようだ。

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文=牧野愛博

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