「常に対応可能」であることを誇るリーダーは多い。夜遅くのメッセージにも返信し、あらゆる会議に積極的に参加し、コミットメントの証としてスケジュールを空けておく。その心がけは立派だ。いつでも連絡がつく状態は、共感性が高いように見える。存在感や謙虚さ、献身の姿勢が伝わる。
しかし、常に対応可能であることには、隠れた代償が伴う。状況に対して迅速に対応している、という思い込みの裏で、集中力が損なわれる。関与と干渉の境界線が曖昧になる。いつも連絡を絶やさないリーダーは、やがて大局的な視野を失い、チームは自主性を失う。
パンデミック下で「常時対応」の文化が根づき、デジタルツールが距離を縮めた一方で、合間にあった余白は消え去った。つながりを築くために始まったものが、強制へと変質した。現在、多くのリーダーは「連絡がつくこと」を「有能さ」とはき違えている。思考の質ではなく、返信の速さでリーダーシップを測っているからだ。
問題は、連絡がつく状態そのものではない。「意図的な距離」が失われることにある。つまり、リーダーが思考し、省察し、その場しのぎに終わらない意思決定を下すために必要な余地のことだ。あらゆる場所に存在しようとするリーダーは、視野に基づく権威を希薄化させている。



