「常に対応可能なリーダー」という神話
いつでも連絡がつく状態でいることは、意図せぬシグナルを送る。リーダーシップとは絶え間ない監視を意味する、というシグナルだ。チームは、自分たちで判断する代わりに、リーダーの承認と指示に頼るようになる。この力学は、双方を弱体化させる。従業員は成長を止めてしまうし、リーダーはプロセス上のボトルネックとなる。
心理学者ロイ・バウマイスター博士による「決断疲れ」の研究は、精神的なエネルギーが有限であることを明らかにしている。何かを選択するたびに、エネルギーは消耗する。1日中メッセージや些細な決定への対応に追われるリーダーには、「真に自らの判断を要する課題」に充てる余力が残らない。連絡がつくことは生産的に感じられるが、その陰でひそかに、深い思考が、即応性とトレードされているのだ。
同時に、それは権威を損なう。リーダーが些細な質問にもすべて答えていると、組織の階層が平坦化されてしまう。一見すると民主的なようでも、実際には混乱を引き起こす。従業員は、承認が必要な事項かそうでないかの区別をつけなくなる。全員が承認待ちになるため、意思決定の速度は低下する。
心理的なコストも存在する。常に連絡を絶やさないリーダーは、自身の情緒のバランスを保つための境界線を失う。回復する時間を持てないと、共感はいら立ちに、決断力は疲労へと変わる。チームもそれに気づく。配慮を示すためだった即応性が、かえって信頼を損ねるようになってしまう。
優れたリーダーは、不在もまた1つの在り方であることを理解している。戦略的に連絡を絶つことで、他の者がリーダー的に行動する余地が生まれる。それはチームの能力への信頼を示し、リーダーシップとは監視することではなく、支援し責任を担うことを意味する、という認識を強める。


