だが、最初に月面で生成された33Sが、どのようにして最終的に月のマントル内に行き着き、約39億年~32億年前の月の火山活動に供給されたのだろうか。
「これは月面からマントルに至る古代の物質交換の証拠かもしれない」と、ドッティンは指摘する。「地球ではプレートテクトニクスがこれを行っているが、月にはプレートテクトニクスがないため、初期の月に何らかの交換メカニズムが存在したとするこの仮説は非常に興味深い」
もう1つの可能性は、硫黄の異常が月そのものの形成の名残だというものだ。月の形成については、45億年前にテイア(Theia)と呼ばれる火星ほどの大きさの天体が地球に衝突して形成されたとする説が主流となっている。この衝突によって生じた天体の破片が最終的に合体し、月を形成した。テイアの硫黄の特性が地球と大きく異なり、この違いが月のマントルに記録されている可能性がある。
今回の研究では、可能性のある2つの説のどちらが正しいかは明らかになっていない。科学者がこの答えを見つけるのに、火星やその他の天体の硫黄同位体に関するさらなる研究が助けになる日が来るかもしれないと、ドッティンは期待している。最終的には、同位体特性の分布を把握することが、太陽系形成の仕組みに関する科学者の理解の向上に役立つと、ドッティンは述べている。
今回の論文「Endogenous, yet Exotic, Sulfur in the Lunar Mantle」は学術誌JGR: Planetsに掲載された。論文はここで閲覧できる。
追加資料とインタビューはブラウン大学のケビン・ステイシーから提供された。


