中国の政策当局者にとって「#中国恒大」がトレンド入りする日はけっして良い日ではない。その中国で、別の不動産開発会社である万科企業が国内債の償還延期を提案し、市場を動揺させている。
万科は、中国の不動産開発大手でデフォルト(債務不履行)を免れてきた数少ない一社だ。中国不動産業界のデフォルト問題で最も有名な事例はもちろん、2021年9月に恒大に起こしたものであり、これをきっかけに中国の不動産危機は世界の耳目を集めることになった。恒大がオフショア債の計1億3100万ドル(現在の為替レートで約205億円)の利払いを2回遅延してから、投資家はもはや19兆ドル(約3000兆円)規模の中国経済を以前と同じようには見なくなった。
以来、中国の習近平国家主席のチームは、不動産市場の安定化を幾度となく約束してきた。しかし、打ち出されてきた対策はといえば、かつて中国の国内総生産(GDP)の3分の1を生み出していた不動産部門を「止血」するにはあまりに不十分なものだった。
中国の家計支出や景況感が低迷し、デフレが4年目に入ろうとしているのは偶然ではない。また、中国の「2つの経済」のギャップが広がっているのにも、それなりの理由がある。
2つの経済のひとつは、中国がまさにいま構築している「新しい経済」だ。この活気ある経済からは、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)やAI(人工知能)新興のDeepSeek(ディープシーク)をはじめ、テック企業の成功例を次々と生み出している。そこでは馬雲(ジャック・マー)のアリババ集団も目下、組織を再編し、ハイテク分野をディスラプト(破壊)しようとしている。
この経済の成果は、EV、航空宇宙、半導体、AI、再生可能エネルギー、電池、バイオテクノロジー、グリーンインフラ、ロボティクス、量子コンピューティング、自動運転技術といった分野で、中国が未来を主導していくための習の10カ年計画に負うところが大きい。
この新しい経済が繁栄するためには、それを支えたり補ったりする古い経済がしっかりしている必要がある。ところが、後者には深刻な問題がいくつもある。なかでもとくに深刻なのが、いっこうに収まる気配のない不動産危機だ。



