ブルーマーブルの果実(の皮)を電子顕微鏡で観察すると、まるで微小なガラス板が積み重なっているように見える。この構造が反復されると、強め合いの干渉(constructive interference)が生じる。その結果として、果実の皮は、青の波長だけを反射し、ほかのすべての波長を吸収する。
簡単に言えば、この果実の青は、色素に由来する青い染料や塗料とは性質が違う。ブルーマーブルは、顕微鏡でしか見えない微細な構造により、射し込む白色光のうち青色だけを反射する。驚くことに、このような構造色をもつ果実は、知られているかぎり、地球上にわずか6種しか存在しない。
なぜブルーマーブルは青い果実を進化させたのか?
生物学的に言って、青という色は、直感的には理にかなわないように思える。熱帯雨林のほとんどの果実は赤、オレンジ、黒といった色をもち、これらは周囲の葉と顕著なコントラストをなして、熟していることを動物たちに知らせる。だが、構造色の青は途方もなく希少であり、この希少性そのものが機能を果たすのかもしれない。
先の『PNAS』論文は、最も可能性の高い仮説として、ブルーマーブルの果実の青色は、鳥にとって信号灯のようにはたらくのだろうと論じている。鳥は優れた色覚を持っており、青と紫外線への感受性がとりわけ高いのだ。これにより、青い果実は、以下の2つの進化的優位性を獲得した可能性がある。
・遠距離シグナル:光の屈折を利用するユニークな構造により、この果実は、うっそうとした樹冠の影に隠れていても目立つ。そのため、鳥たちは遠くからでも容易にブルーマーブルを見つけることができる。
・完熟を知らせる:ほかの多くの果実とは違って、ブルーマーブルの青色は、母樹から落ちたあとも、あせることなく残る。
結果的に、ブルーマーブルは、遠距離の視覚的アピールに投資することで、独自のニッチ(生態的地位)を確立したのだろう。より具体的に言えば、この進化的戦術を採用したことで、この木の果実は鳥にとっての魅力を増し、果実を食べた鳥たちが、種子を広く遠く分散させるよう促したのだ。
「進化の外れ値」としてのブルーマーブルの果実
進化生物学者にとってブルーマーブルは、さまざまな理由から、一般の人が考える以上に驚異的な存在だ。この果実は、鮮烈な色そのものが珍しいだけでなく、植物や果実の色に関する私たちの数々の思い込みを覆し、進化と素材科学における、いくつもの貴重な教訓を示している。
構造色は、途方もない精密さを要する性質とみられるが、それでも時には、色素ベースの色がもつ化学的生成コストと比べ、効率的なものになり得るのだ。
ブルーマーブルは、樹木そのものは特に目を引くわけではないが、科学者たちが長年にわたって信じてきた、色についての定説の多くを覆す存在であり、SFめいてさえいる。しかし進化はしばしば、魔法のように見える解決策を見つけ出すものなのだ(生物学的な説明がつくまでは魔法のように見える、ということではあるが)。


