アメリカ各地で、新世代のIPAが「ホップ的」であることの意味を塗り替えつつある。
2025年にBeverage Testing Instituteのワールド・ビア・チャンピオンシップの審査で上位評価を得たIPAのラインナップには、実験的なホップ製品を軸にしたローテーション式(醸造ごとにレシピを変える)のヘイジーシリーズ、Citra(シトラ)ホップから考え得る限りのフルーツ香を絞り出すシングルホップのショーケース、ミルクシェイクのようにふんわりとしたニューイングランドIPA、そして今なおカラメルモルトと松のニュアンスを効かせた、思い切った苦味のウエストコースト系ダブルIPAが並ぶ。
これらは総じて、柔らかく濁ったスタイルから明るくキレのあるスタイルまで、ホップの香り漂う弧を描いており、現代のIPAビールスタイルを牽引する技術と原材料が浮き彫りになっている。
Fremont Brewing「Head Full of Dynomite Hazy IPA v.59」 (アルコール度数6.8%)
Fremont Brewingは2009年創業のシアトルの家族経営ブルワリーで、現在ではワシントン州最大級の規模を誇り、バレルエイジングとサステナビリティの分野をリードする存在である。
「Head Full of Dynomite」は同社のローテーション式ヘイジーIPAシリーズであり、番号付きの各バージョンごとにホップのレシピが変わる。バージョン59では、ペールモルトではなく小麦とオーツ麦をふんだんに使ったグリスト(麦芽配合)を採用している。Simcoeの「Dynaboost」のようなモダンなホップ製品に加え、実験的ホップのHBC 586やEl Dorado Cryoを用い、早い段階での苦味付けではなく、大量のレイトホッピングとドライホッピングでキャラクターを与えている。
このビールの特徴は、仕込みごとにホップレシピが絶えず変化する点にある。オーツと小麦を多用することで濁りとふわりとしたテクスチャーが加わり、濃縮タイプのホップフォーマットが、荒々しい苦味を増やすことなくアロマを押し上げている。
香りはマンゴー、パイナップル、パパイヤといった力強いトロピカルフルーツに、オレンジやメロン、わずかなストーンフルーツ(核果)のニュアンスが重なる。かすかなフローラル、レモングラス、ほのかなハチミツ、軽い松の香り、そして加熱したシリアルグレインのようなノートが加わり、複雑なアロマプロファイルを形作っている。
口に含むとミディアムフルでふくよかであり、オーツと小麦由来の柔らかく、ほとんどクリーミーな口当たりがある。ジューシーなオレンジとトロピカルフルーツが前面に出て、穏やかな甘みと、ビールを生き生きとさせる程度の青々しいホップのエッジが伴う。
フィニッシュは中程度の長さでほんのり甘く、シトラスピス(柑橘の白いワタ)、トロピカルフルーツ、かすかな樹脂のニュアンスと、ごく軽い苦味が余韻として残る。



