気候・環境

2025.12.03 11:30

山や森をのみ込む都市開発──知られざる「人間へのブーメラン」

中国・重慶では、かつての丘や森が前例のない速度で都市へと変貌していっている(Shutterstock.com)

中国・重慶では、かつての丘や森が前例のない速度で都市へと変貌していっている(Shutterstock.com)

1950年の時点では、世界の人口の40%が農村部に住んでいた。しかし国連の調査によると、今日その割合は20%まで減少し、人口の実に80%が都市部に集中しているという。そんな人口増加に対応するため、都市圏は拡大の一途をたどっている。

報告書によれば、1975年以降、世界各地の市街地面積は、人口増加のほぼ2倍の速度で拡大。その結果、1人当たりの市街地面積は43平方メートルから63平方メートルに増加した。

Nature Cities(ネイチャー・シティーズ)に掲載された新たな研究では、急速な都市化と、平地を必要とする農業との競合が相まって、市街地が丘陵地や山地、その他の高地へと拡大を続けていることが明らかになった。そしてその生物多様性への影響は深刻だ。

データで見る「都市拡大」の現実

研究チームは、地球全体をカバーする30m解像度の地形図を用いて、2000年から2020年の間に「都市化した丘陵地の面積」が地球全体で1165万ヘクタール増加したことを明らかにした。これは、アイスランドの国土面積(1010万ヘクタール※)を上回る大きさだ。

地理的な広がりで見ると、増加がもっとも大きかったのはアジアで、この20年間に509万ヘクタールの丘陵地が市街地へと姿を変えた。そのうち約60%(300万ヘクタール)が中国で起きたものだ。これに北米(268万ヘクタール)、欧州(195万ヘクタール)が続く。また、都市の拡大に対して丘陵地開発の割合がもっとも高かったのは南米の約25%で、オセアニア(20.52%)、北米(20.35%)が僅差で続く。

丘陵地は、陸上動植物の生物多様性が多く残る地域だ。森林や湿地は、無数の動植物種の「避難所」となっている。こうした地域での都市開発が進むにつれ、生息・生育地が喪失、また分断され、個体群が孤立化することで絶滅リスクが高まり、土壌侵食(農作物の収穫量の激減、砂漠化、洪水の増加などにつながる)を引き起こす。

この研究では土地の利用状態を示す地図を用い、丘陵地の都市化による生息地への喪失や分断の影響を、地球・大陸・国家・地域規模で分析した。その結果、2000〜2020年の間に、世界全体で推定673万ヘクタール(リトアニアの国土面積とほぼ同じ)の生息・生育地が失われたことがわかった。さらに、丘陵地の都市化だけで「森林喪失の31.11%、草原喪失の3.50%、灌木地喪失の26.79%、湿地喪失の3.26%、未使用地喪失の10.80%」を占めていることも明らかになった。

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翻訳=猪股るー

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