時として、問題を小さくするためには、まず大きくする必要があると言われる。今や開始から4年を迎えようとしているウクライナ侵攻も同様だ。
米国のドナルド・トランプ政権が発表した、ウクライナ侵攻終結に向けた28項目から成る和平案はロシア寄りだとして非難を浴びた。だが、こうした寛大な条件でさえ、ロシア大統領府(クレムリン)が合意するには至っていない。米国のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使は行き詰まりを打開するため、近くモスクワへ向かう予定だ。
それに当たり、ウィトコフ特使はこれまでの和平案には盛り込まれていないある点を心にとどめておくべきだろう。それは、ウクライナ侵攻は今や国際的な問題であり、ロシアを支援する外部の勢力に狙いを定めることが、同国の計算を変える最も効果的な方法かもしれないということだ。
中国はそうした協力国の1つだ。近年、中露間で発展してきた「無制限の」協力関係の一環として、中国はロシアにとって重要な戦時支援物資の供給源となっている。米当局者によると、中国は無人機(ドローン)やミサイル技術に加え、戦場の機密情報や兵器製造用の工作機械をロシアに供給している。中国企業はロシアとの間で灰色市場取引を展開し、規制対象の半導体から電子機器や精密誘導兵器に必要な重要鉱物に至るまで、あらゆる商品を輸出している。こうした取引は西側の制裁の中でロシア経済を支えてきた。こうして、中国はロシアの侵略戦争の「決定的な支援者」となったと西側当局者は指摘している。
イランもロシアの支援国だ。過去3年間にわたり、イランはロシアに数千機の先進的な無人機を供給しており、ロシア軍はこれをウクライナの都市や社会基盤、民間施設を標的にするために使用してきた。また、イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」から要員を派遣し、ロシア軍が無人機を運用できるよう訓練を施している。イランはロシアの無人機の国産化を支援するとともに、西側の制裁を回避する方法についても助言している。
北朝鮮もロシアの侵略戦争に加担している。ウクライナの情報機関の推計によれば、北朝鮮はロシア軍への弾薬の主要供給国となっており、以前は同軍が使用する弾薬の半分ほどを北朝鮮製が占めていた。同国はロシアに弾道ミサイルも供給しており、実際にウクライナへの攻撃に使用されている。さらに、北朝鮮は両国間の相互防衛条約の一環として、ロシア国境地域と前線の双方でロシア軍を増強するため、約1万4000人の兵士を派遣している。
他にもロシアの戦争遂行に貢献している国がある。例えばトルコは、小火器弾薬、砲弾、ロケット燃料の製造に欠かせないニトロセルロースの供給国として台頭している。カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンといった中央アジア諸国は、欧米の制裁をよそに貿易の中継点として、ロシアが西側の先端技術の入手を維持する上で重要な役割を果たしてきた。
これら全てが米国の政策立案者に厳しい選択を迫っている。過去3年半にわたり、欧米諸国はウクライナに侵攻したロシアに制裁を科してきた。だが、戦争遂行に不可欠な物資をロシアに供給する第三国に関しては、市場の混乱などへの懸念から対応が遅れている。
しかし明らかなのは、こうした圧力は実際に加えられた場合に効果を発揮するということだ。例えば、最近の米国の制裁により、インドと中国の石油精製会社は米市場とのつながりを維持するため、ロシア産原油の輸入を停止せざるを得なくなった。この措置は米国とその同盟国が従うべき明確な指針となる。ただし、ロシアの貿易相手国に対し、欧米との取引がロシアとの関与の利益を上回るかどうか選択を迫る覚悟がある場合に限る。少なくとも現時点では、その覚悟は示されていない。



