教育

2025.12.12 10:15

「裕福なのに子育てに苦しんだ」ハリウッドで屈指の大富豪の告白

家で電気をつけっぱなしにしておくと、父親から電気代の請求書を見せられる。「父はこう言うんだ。『見なさい。これがうちが払っている電気代だ。電気を消さないのは怠け者だからだ。おまえが怠けたせいで、うちはこれだけのお金を払っている。だが、勉強か仕事のために明かりが必要で、24時間ずっと電気をつけていなければならないというのなら、それは問題ない』」

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16歳の夏、彼は父親が経営するくず鉄のビジネスで働いた。きつい肉体労働だった。扱いは他の従業員とまったく変わらなかった。「そのせいでミネアポリスには住みたくないと思うようになった」と彼は言った。

「父親の会社をあてにする気も一切なくなった。ひどい目にあったよ。きつくて、汚い。それに退屈だ。くず鉄を樽に入れる作業だ。あそこで働いたのは、5月15日からレイバー・デー(「労働者の日」という意味のアメリカの祝日。9月の第一月曜日)までだ。ずっと全身が汚れたままだった。今からふり返れば、父が私をあそこで働かせようと思ったのは、私があの仕事を経験すれば、絶対に逃げ出したくなるとわかっていたからだろう。もっと上を目指すモチベーションになるということだ」

大学時代、彼は洗濯サービス業を経営した。お金持ちの同級生を顧客にして、ドライクリーニングの回収と配送を行う。学生を対象に、ヨーロッパ行きの飛行機をチャーターする仕事もした。友達と一緒にバスケットボールを観戦するときはいちばん安い席に座った。柱で視界が遮られるような、最悪の席だ。彼はそこに座り、考えた──コートサイドのプレミアム席に座るのは、いったいどんな気分だろう?

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お金は野心の道具

彼はニューヨークのビジネススクールに進学し、その後ロースクールでも学んだ。その間、お金を節約するために、ブルックリンの荒廃した地域で暮らした。卒業後はハリウッドで職を得た。それがさらに大きな仕事につながり、またさらに大きな仕事につながった。さまざまな契約や受賞を経ながら、とてつもない成功を積み重ねていく。

そしてついに、彼はビバリーヒルズに自宅を所有した。飛行機の格納庫ほどもある巨大な邸宅だ。それに加えて、プライベートジェット1機を所有し、自宅のガレージにはフェラーリが1台ある。自宅のドライブウェイはどこまでも続いていきそうなほど長く、その先には、中世のヨーロッパのお城から運んできたかのような立派な門が鎮座している。

彼はお金を理解していた。そして、彼がお金を理解していたのは、故郷のミネアポリスのストリートで、お金の裏も表も学び尽くしたと本人が感じていたからだ。

「私はもっと自由が欲しかった。いろいろなものを手に入れようという野心を持ちたかった。お金はその野心をかなえる道具になる。お金が私の欲求も意欲も満たしてくれる」と彼は言った。

「誰も私にそれを教えてくれなかった。私は自分で学んだ。いわゆる試行錯誤のくり返しだ。そこから得られるおいしい部分が気に入った。おかげで自尊心も手に入れた。自分の人生をコントロールしているという気持ちが大きくなった」

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文=マルコム・グラッドウェル/ジャーナリスト兼作家、訳=桜田直美

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