教育

2025.12.12 10:15

「裕福なのに子育てに苦しんだ」ハリウッドで屈指の大富豪の告白

経済的に余裕があれば、子どもに良い環境を与えられる——そう考える人もいるかもしれない。しかし、ハリウッドで成功を収めたある大富豪は、こう語る。「貧しさのせいで人生が台無しになることもある。しかし、豊かさが人生を台無しにすることもあるんだ」

ベストセラー作家マルコム・グラッドウェルが紹介するこの告白は、成功者が直面する矛盾を示している。私たちが「有利」だと信じているものは、実は「不利」になりうるのか。『David and Goliath 絶対強者をうち破れ』(サンマーク出版)から、一部抜粋・再構成してお届けする。


大金持ちの子育ては難しい

そう遠くない昔、私はハリウッドで一、二を争う有力者と実際に会って話を聞いたことがある。彼はまず、ミネアポリスですごした子ども時代の話から始めた。

毎年、冬になると、彼は近所の通りを歩き回り、ドライブウェイと歩道の雪かきをしてほしい人を探したという。そして顧客が集まると、今度は近所の他の子どもたちに雪かきの仕事を割り振っていく。下請けの子どもが仕事を終えると、彼は自分のお金からすぐに報酬を払う。それから顧客の家族を訪ねて料金を徴収する。

なぜこの順番なのかというと、下請けの子どもにきちんと働いてもらうには、これがいちばん確実な方法だったからだ。彼は、8人、ときには9人の子どもを雇っていた。秋の間は、業務内容が雪かきから落ち葉の掃き掃除に切り替わった。

「現場を回って彼らの仕事ぶりをチェックしていた。きちんと顧客の望み通りにきれいになっているか確認するためだ」と、彼は当時を回想した。「必ずひとりかふたり、真面目に働かない子どもがいる。そういう子たちは解雇しなければならなかった」

当時、彼は10歳だった。11歳になるころには、彼の銀行口座には600ドルが貯まっていた。すべて自力で稼いだお金だ。これは1950年代の話だ。現在の価値に換算すれば5000ドルほどになるだろう。

「あのころは、行きたいところに行くためのお金がなかった」。彼はそう言うと、肩をすくめた。まるで11歳にもなれば、自分の行きたいところがわかっていて当然だとでもいうように。

「どんなバカでもお金を使うことはできる。しかし、お金を稼ぎ、使う喜びを後回しにして貯金するためには、別の角度からお金のありがたさを理解することが大切だ」

彼の家族が暮らしていたのは、人々が婉曲的に「混合した地域」と呼ぶような場所だ。彼は公立学校に通い、お古の服を着ていた。父親は大恐慌時代の産物で、率直にお金の話をする。このハリウッドの男性は、父親からこう言われていた──もし何か欲しいものがあるなら、それが新しいランニングシューズでも、自転車でも、半額を自分で払わなければならない。

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文=マルコム・グラッドウェル/ジャーナリスト兼作家、訳=桜田直美

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