クラスサイズに関する典型的な研究は、次のような結論になっている。
オーストラリア、香港、スコットランド、アメリカの4つの国と地域において、われわれが実施した識別戦略から判明したのは、推計はきわめて不正確であり、クラスサイズ効果(クラスの人数が学習効果に影響を与える現象)の有無を断言するのは不可能だということだ。ギリシャとアイルランドの2カ国においては、クラスサイズを削減することによる、小さくはない効果があるように認められた。
フランスは、数学と科学の授業において、クラスサイズによる顕著な違いがあるように認められた唯一の国だ。数学では、統計的に有意で大きなクラスサイズ効果が認められたが、科学の授業では同等のクラスサイズ効果は除外できるという結果になった。
9つの学校システムでは、数学と科学の両方の授業における大規模なクラスサイズ効果は除外できるという結果になった。具体的には、2つのベルギーの学校、カナダ、チェコ共和国、韓国、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペインの学校がそれぞれ1つずつだ。最後に、日本とシンガポールの2カ国においては、クラスサイズが生徒の学業成績に与える顕著な因果効果はすべて除外できるという結果になった。
クラスサイズ削減効果がみられたのは18カ国中2カ国
おわかりだろうか? 18の国と地域における生徒の学業成績を調べた数千ページにも及ぶデータを精査した結果、経済学者たちが出した結論は、「クラスサイズを削減することによる小さくはない効果があるように認められた」のは、世界でたった2カ国であるということだったのだ。その2カ国とは、ギリシャとアイルランドだ。
ギリシャとアイルランド? アメリカはかなり努力して1クラスの人数削減を目指してきた。その結果、1996年から2004年にかけて、約25万人もの新しい教員が採用されている。それと同じ期間で、アメリカの学校における生徒ひとりあたりの支出は21パーセントも増加した。この何百億ドルにも及ぶ支出のほとんどは、教員の増加に費やされている。
過去20年の間に、これほど急速なペースで就業人数も投入される予算も増えた職業は、全世界で教員だけだといっても過言ではないだろう。この種の予算を投入する国家が、次から次へと出現している。なぜなら、すべての教師がすべての生徒を知ることができるシェポーグ・バレー中学校のような学校を見ると、私たちはこう考えるからだ。「あのような学校にぜひうちの子どもも入れたいものだ」と。
しかし、数々のエビデンスによると、私たちが巨大なアドバンテージだと確信しているものは、実はアドバンテージでも何でもないようだ(*)。
(*)何百も存在するクラスサイズ研究に関する決定的な分析を行ったのは、経済学者のエリック・ハヌシェクによる「クラスサイズのエビデンス(The Evidence on Class Size)」だ。ハヌシェクはこう言っている。「学校のあらゆる側面で、クラスサイズほど研究の対象になったものはないだろう。この研究はもう何年も前から続いているが、クラスサイズと学業成績の間に一貫した関係があると信じるに足る証拠はまったく存在しない」
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