もし仮に、人数が多い年の生徒のほうが、人数が少ない年の生徒よりも成績がよかったら、その原因は1クラスの人数にあるとしか考えられないはずだ。違うだろうか?
この種の研究方法は「自然実験」と呼ばれている。科学の実験は、一般的に、仮説を検証するために人工的な状況をつくって実施する。しかしまれにではあるが、現実の世界の現象を使って仮説を検証できることもある。それが自然実験だ。自然実験には、研究者がコントロールした一般的な実験と比べて数多くの利点がある。
そこで興味深いのは、コネチカット州の自然実験を活用し、たまたま人数が少ない年に生まれた子どもと、たまたま人数が多い年に生まれた子どもの成績を比較したら、いったい何がわかるのかということだ。
結論は「わからない」
経済学者のキャロライン・ホクスビーが、まさにそれを実行した。そして、コネチカット州のすべての小学校を調べた結果、出た答えはこれだ──「何もわからない!」
「多くの研究で、政策の変更による統計的に有意な効果は発見できないという結果になっている」と、ホクスビーは言う。「だからといって、効果がまったくないというわけではない。ただ、データからは発見できなかったということだ。私の研究でも、効果はゼロという複数の推計を発見した。文字通りのゼロだ。言い換えると、効果はまったくないということになる」
もちろん、これは1つの研究にすぎない。しかし、1クラスの人数(クラスサイズ)に関するすべての研究を調べても、視界は一向にクリアにならない──ちなみに、この種の研究はすでに数百単位で行われている。そのうちの15パーセントが、統計的に有意な形で、少人数のクラスのほうが子どもの成績がいいという結果になった。
逆に少人数のクラスのほうが成績が悪いという結果になった研究も、それと同じくらい存在する。20パーセントはホクスビーの研究と同じで、効果はまったく認められないという結果になった。それ以外は、少人数のほうがいいという結果になったものもあれば、逆の結果になったものもあるが、どちらも微妙な違いでしかないので、明確な結論を導き出すことはできなかった。


