教育

2025.12.09 10:15

「少人数学級のほうが良い教育ができる」という考え方の大いなる勘違い

「少人数学級のほうが良い教育ができる」——多くの国で、この考え方が支持されてきた。きめ細かい指導によって成績向上につながるという期待からだ。アメリカは過去20年で多くの予算を投じ、25万人もの新しい教員を採用してこれを実現しようとした。

しかし、ベストセラー作家マルコム・グラッドウェルが数百の研究データを精査した結果は驚くべきものだった。世界18カ国で少人数クラスの明確な効果が認められたのは、わずか2カ国だけだった。私たちが「有利」だと信じて疑わないものは、本当に有利なのか。『David and Goliath 絶対強者をうち破れ』(サンマーク出版)から、一部抜粋・再構成してお届けする。


急激に減少する生徒数

シェポーグ・バレー中学校は、大量にいるベビーブーム世代の子どもたちを受け入れるために誕生した。設立当初は、毎朝、スクールバスから300人もの生徒が吐き出されるような状態だった。校舎の入口には、両開きのドアがずらりと並んでいる。一斉に押し寄せた生徒が渋滞にならないようにするためだ。中に入ると、廊下はまるでラッシュアワーのハイウェイのようだった。

しかし、それは遠い昔の話だ。ベビーブームはやがて終わりを告げる。シェポーグは、コネチカット州ののどかな田園地帯だ。魅力的な植民地時代の村で、曲がりくねった田舎道が続いている。

やがて、ニューヨークからやって来た裕福な夫婦がこの土地を発見した。不動産価格は上昇した。若い家族は、もうシェポーグには住めなくなった。生徒数は245人まで減少し、その後さらに200人をわずかに超えるほどになった。

現在、6年生の生徒は80人だ。同じ地域の小学校から上がってくる生徒数から推計すると、遠からずその数は半分になるだろう。それはつまり、シェポーグ・バレー中学校の1クラスの平均人数は、間もなく全米平均を大きく下回るようになるということだ。かつては大勢の生徒でにぎわっていたが、今は少人数のこぢんまりした学校になっている。

あなたなら、自分の子どもをシェポーグ・バレー中学校に通わせたいと思うだろうか?

私たちの考える「有利」と「不利」はいつでも正しいわけではないということだ。私たちはこの2つを混同している。

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文=マルコム・グラッドウェル/ジャーナリスト兼作家、訳=桜田直美

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