普通に生活しているだけで、私たちは注意を浪費している。無意識のうちに数えきれないほど注意を切り替え、気づけば脳には疲労がたまっている——。作業療法士であり脳の仕組みの専門家・菅原洋平氏は、現代人が陥りやすい「多忙感」の正体をこう説明する。
やることが実際に多い「多忙」ではなく、多いと「感じてしまう」状態。マルチタスクによる脳疲労に外乱が加わることで、集中力も判断力も失われていく。菅原氏はその解決策として、1日15分だけシングルタスクの時間を作ることを提唱する。外部との接続を断ち、1つの作業だけに集中する。この習慣が脳に何をもたらすのか。『多忙感』(サンマーク出版)から一部抜粋・再構成してお届けする。
「抑制力」をつけると気が散らなくなる
1日15分だけでもシングルタスクを続けていると、ある変化に気づきます。
気が散らなくなるのです。
15分のシングルタスクをしている時間だけではなく、1日のあらゆる時間で、です。
メールをチェックしたい、スマホを見たいという衝動は控えめになり、メールが来ても自分の作業を優先して、自分の区切りでメールを開くことができるようになっていきます。
いつもはソワソワするはずが、不思議と心は平穏でいられます。
メールはチェックしていますが自ら能動的にメールを見に行っているので、これは外乱ではありません。
以前より気が散らなくなったと感じたら、同時にアイデアがひらめきやすくなります。
これまでは、分からないことがあるとすぐにスマホで検索していたかもしれません。場合によっては、結局答えは見つからず、ただ疲れただけで終わることもよくあったでしょう。
ところが抑制力がついてくると、「すぐ検索したい」という衝動を一旦止められるようになります。
すると、その空いた時間に脳が自然と考え始めるのです。
「どうやってやればいいかな」
「これって何かに似ているな」
「前にやったあの方法が使えるかも」
このように、外部に答えを求める前に、まず自分の頭で考える時間が生まれます。
この「考える時間」こそが、アイデアが生まれる瞬間なのです。



