間もなく到来する本格的な冬に向けて、昨年まで着古したセーターを処分し、新品に買い替えようと考えている人も多いだろう。セーターの素材ではウール(羊毛)が王者とされている一方で、カシミヤ(カシミヤ山羊)は独自の威信を保っている。
そして近年、著名デザイナーと独立系ブランドの両方で選ばれる素材として注目が高まっているのが、アルパカの毛だ。
アルパカが選ばれる理由
アルパカウールの特長を理解するためには、羊毛などの類似した素材と比べて、どのような天然の違いがあるかを理解することが一番だ。例えば、アルパカはラノリン(羊毛の表面に付着している蝋状の脂肪様物質)を分泌しない。ラノリンは皮膚刺激、皮膚炎、さらにニキビの原因にもなることがある。アルパカ繊維は天然の低刺激性素材なので、敏感肌の多くの人に好ましい代替ウールだ。
毛包自体の構造もアルパカ繊維の人気に大きく貢献している。顕微鏡で見ると、羊毛の繊維には表面に鱗状の微細な突起物がある。この鱗構造が広範囲だったり密集しているほど、例えばセーターが素肌に触れたときに刺激を与える。これがウールのセーターが「チクチクする」原因だ。
アルパカ繊維は羊毛よりも毛包に対して滑らかで細いので、セーターを着用した際の摩擦や刺激が少ない。実際、この滑らかな繊維の表面は吸湿・発散性に優れ、臭いにも強い。そのため、洗濯の頻度を減らし、衣類の寿命を延ばすこともできる。
機能性の観点から言うと、アルパカウールは断熱性と耐摩耗性を兼ね備えている。密度が高い織りと摩耗に優れた繊維であることから、アルパカウールの機能性は多くのデザイナーに好まれている。
アルゼンチンの職人と協力して衣類や家庭用品、キッチン用品などを手掛けるFields Outfitting(フィールズ・アウトフィッティング)の創設者ライアン・ボラタイルは次のように述べている。「当社の製品をすべて製造している南米で供給量が豊富なアルパカは、我々の最新コレクションに採用しやすい素材でした。他の高級動物繊維が長所としている特性をすべて備えており、モヘアやカシミアといった欧州やインド産の同類素材よりも、耐久性が高くて環境に優しいのです」



