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2025.12.02 11:30

起業家はOpenAIのサム・アルトマンの躍進から何を学べるか

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Y Combinatorの共同創業者ポール・グレアムは、OpenAIのCEOであるサム・アルトマンについて、かつてこう評した。「彼を人食い人種だらけの島にパラシュートで降ろしても、5年後に戻ってきたら彼はその島の王になっているだろう」。

そう40歳にして億万長者の彼は、生まれながらのリーダーだと言ってよいだろう。

アルトマンは、肩肘張らない自然体のカリスマ性で知られている。伝えられるところによれば、彼はマイクロソフトのサティア・ナデラCEOを、階段の踊り場での立ち話だけで協業に引き込み、その1年以内にOpenAIは10億ドル(約1562億円)規模の投資を獲得したという。また、セントルイスの進学校時代の校長からは、polymath(博学多才な人)と評され、「複雑なシステムを直観的に把握する力」を持つ人物だともいわれている。

アルトマンの最も重大な業績は、人工知能(AI)、なかでもChatGPTを誰もが知る存在に押し上げ、人々が情報を検索し、互いにコミュニケーションをとる方法そのものを変えてしまったことだ。AIの能力が拡大し続け、日常生活の一部として定着しつつある今、アルトマンの躍進から学べることは多い。以下では、OpenAIのCEOアルトマンの躍進から導き出せる5つのリーダーシップの教訓を紹介する。

他者が避ける大きな賭けに出る

起業家として、成功が証明されたストーリーの足跡をたどるという戦略には、それなりの価値がある。料理人が古典的なレシピにアレンジを加えるように、基本の筋書きに従いつつ、自分なりの工夫を盛り込むやり方だ。しかしサム・アルトマンは、そうした型を完全に壊してしまうべきだと信じている。

彼はかつてこう語っている。「難しいことの方が、実は簡単なことよりも簡単なのだ。人はそれを面白いと感じるから、手助けしたくなる。また別のモバイルアプリ?そんな話をしても、相手はうんざりした顔をする。ロケット会社?それなら皆が宇宙に行きたがる」。

本当に斬新なことに取り組んでいるとき、人は自然と巻き込まれたくなる。そこには本質的な熱狂があり、自走する勢いが生まれる。アルトマンの今日までの最大の成果であるChatGPTは、その完璧な例だ。ChatGPTはAIに関する筋書きを書き換えた。それまで「AI」と聞いて人々が連想したのはSFに出てくるロボットだったが、今では仕事帰りの親が、帰宅途中に買い物リストを下書きするために使うツールになっている。アルトマンはテック業界で最も難しい問題に早い段階から賭け、大胆な挑戦を追い求めることが、業界とその周辺の文化の両方を作り変えるほどの大きなリターンを生みうることを証明した。

教訓はこうだ。未知のものや、実現はおぼつかないと見えるものを恐れてはいけない。

サンクコストにとらわれない

大学中退という経歴は、シリコンバレーでは一種の決まり文句になっている。マーク・ザッカーバーグ、エリザベス・ホームズ、そしてサム・アルトマンはいずれもその仲間だ。アルトマンはスタンフォード大学でコンピューターサイエンスを2年間学んだ後、友人に自分の居場所を知らせるモバイルアプリ「Loopt(ループト)」の開発にフルタイムで取り組むために中退した。

これは大学中退を勧める公共広告(PSA)ではない。しかし、そこにはサンクコストの誤謬(sunk cost fallacy)についての、より大きな教訓がある。より良いチャンスが目の前にあると直感が告げているとき、すでに時間やリソースを投じてきたというだけの理由で、同じ道を歩み続けることには注意が必要だ。もし、何かの事業を見切ってやめること(あるいは方向転換すること)の方が、自分のより大きな目標やビジョンという観点から見て有益であるなら、それまでの損失を受け入れて前に進むべきだということを、歴史はいくつもの事例で示している。

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翻訳=酒匂寛

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