国内

2025.12.01 14:15

防衛テックに海の衛星群 成長産業カンファレンス「GRIC」で浮かび上がった世界で戦える新勢力

フォースタートアップス代表取締役社長の志水雄一郎氏

フォースタートアップス代表取締役社長の志水雄一郎氏

成長産業の支援を行うフォースタートアップスが主催するカンファレンス「GRIC(GROWTH INDUSTRY CONFERENCE )」が、11月11日から11月13日にかけて開催された。

今回で6回目を迎えたGRICは、「日本のスタートアップエコシステムをグローバルへ」をテーマとし、国内外の起業家や投資家が集う場となっている。今回は1日目と2日目がオンラインで行われ、3日目は渋谷ヒカリエホールにて開催された。

ピッチ登壇の7割はディープテック

イベントの目玉は、2023年から実施している「GRIC PITCH」だ。「CLIMATE TECH & RESILIENCE」「FRONTIER TECH」「UPRISING DIGITAL」の3分野で、すでにグローバル市場への展開をはじめている、もしくは見据えているスタートアップ企業が計18社登壇。

審査項目は「市場」「チーム」「プロダクト・技術」「ビジネスモデル」。国内外120名以上の審査員が、世界の舞台でも成功の可能性があるかどうかを審査した。

登壇企業の顔ぶれは例年と比べ変化した。過去2回は半数だったディープテックが、今回は7割に。ディープテック領域では、SBIR(中小企業技術革新制度)など政策の後押しに加え、宇宙・医療領域でのIPOが増えている。こうした技術系スタートアップの現状が反映された印象だ。

ディープテックの多くは大学や研究機関発だが、今回のピッチでは大企業からスピンアウトした企業もあった。

PathAheadは、本田技術研究所出身の伊賀将之氏が代表をつとめ、砂漠の砂を原材料とする道路舗装材「ライジングサンド」を開発している。舗装寿命を従来の2倍以上に伸ばす素材で、アフリカの未舗装路問題解決を目指す。「ホンダのガーナ工場を活用して生産することで、『ミニマム投資・ミニマムスタート』ができている」と伊賀氏はピッチで語った。

既存工場を活かしながら、初期段階で海外課題に挑むこのアプローチは、日本企業が抱える資産とグローバル市場の接点をどうつくるか、という点でヒントになる事例だ。

PathAhead代表の伊賀将之氏
PathAhead代表の伊賀将之氏

日本ではまだプレイヤーが少ない防衛領域のスタートアップも登壇した。スカイゲートテクノロジズは、元自衛官の粟津昂規氏が代表をつとめ、衛星やサイバー空間で集めた情報をもとに、自国への攻撃リスクをAIが解析する製品を開発している。粟津氏は「TAM(獲得可能な最大市場規模)は国内だけでも40兆円から50兆円ある。防衛省を含めた日本政府やNATO諸国、また民間企業向けの販売を見込んでいる」という。

日本政府は、スタートアップの技術を防衛装備に生かす「デュアルユース・スタートアップのエコシステム構築」を打ち出しており、防衛産業への投資や制度整備が加速。近年、参入するスタートアップが相次いでいる。

スカイゲートテクノロジズ代表の粟津昂規氏
スカイゲートテクノロジズ代表の粟津昂規氏

海という新領域の開拓に挑むプレイヤーも登壇した。oceanic constellationsというディープテック企業だ。同社は、複数の小型無人船を海上に設置して海の衛星群を構築し、密漁監視の実証実験を行っている。

ユニークなのは、デジタルツインの技術を活用して仮想空間上の海で航行シミュレーションを行い、AIが衝突回避や気象条件に応じた最適配置を学習することで、実際の海で複数の無人船が協調して動作する点だ。

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文=露原直人

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