最優秀賞は医療スタートアップ
これらの企業をおさえ、最も多くの審査員票を集めて最優秀賞に輝いたのはCraif(クライフ)だ。同社は、がんリスクを早期発見できる尿がん検査「マイシグナル・スキャン」を開発・提供している。
三菱商事出身の小野瀨隆一氏が代表をつとめ、COOの水沼未雅氏とCTOの市川裕樹氏は製薬会社出身で、ビジネスとサイエンスを両立する経営チームを組成している。ステージ1の検出精度は90%と高く、提携医療機関はすでに2000超。累計利用は5万回以上にのぼる。
1回6万円と検査費用は高額だが、利用者の50%以上が定期的に利用しているといい、この点は同社製品の潜在需要の大きさを示すものだ。今年10月には米サンディエゴに拠点を設立し、製品に人種差が生じないかを検証するため、現地での検体収集を進めている。
海外投資家に投資・協業相談できるブースも
会場では、トークセッションやピッチに加え、投資や協業を求める起業家が、ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、事業会社の担当者に1組5分でピッチを行うSPEED DATINGブースが設けられた。過去2回のイベントでも設置されていたが、日本の投資会社だけでなく海外投資家に接触できる機会で、起業家たちが熱心に事業説明や協業の相談をもちかける姿があった。
欧州のプライベート・エクイティファンドであるEurazero、韓国LGグループのCVCであるLG Technology Ventures、インドネシアのベンチャーキャピタルであるIndogen Capitalなど、多様な投資家がブースを構えた。

日本国内のスタートアップの資金調達金額は、2022年を境に減少傾向にある。そうしたなか、特に海外志向の企業にとって海外投資家は貴重な資金供給源だ。実際、米TCVが2025年9月に日本1号案件としてLayerXにリード投資したり、フランスのプライベート・エクイティファンドであるジョルトキャピタルが東京にアジア初の拠点設置を予定していたり、海外投資家による日本での動きが活発化し始めている。
今回のGRICの参加登録件数は、46の国と地域から、過去最大の1万2000件となった。多くのスタートアップ関係者が詰めかけ、一部では入場制限がかかるようなトークセッションもあるなど、会場は活気に満ちていた。

フォースタートアップス代表取締役社長の志水雄一郎氏は、イベントを次のように締めくくった。
「過去のGRICでは、ヘラルボニーがLVMHと組んで世界に出ていくきっかけをつくった。そのような事例がこれからも生まれてくるだろう。スタートアップエコシステム全体で、挑戦者たちを世界で勝たせにいく」


